件のミイラは顔が人間、体が牛という半人半牛の怪物で、生まれると災いが起こるとされている。前回、ご紹介したのは干からびたミイラの写真であったのだが、実は生きていた姿そのままで剥製にされた件が日本に存在していたという。
今回、ご紹介している写真は長崎の農家で生まれたという件の剥製の写真である。
右の写真をよくご覧いただきたい。子牛の体に白い人間の顔のようなものがベッタリと張り付き、異様なオーラを放っている。その顔はこの世のものとは思えない強烈なオーラを放っている。まさに「凶兆を呼ぶ」に相応しい怪物そのままのビジュアルである。
この件は明治42年(1909年)に「名古屋新聞」で紹介されたものとされている。
記事によるとこ明治39年(1904年)に長崎の農家で生まれ、しばらく生きていた後、生後31日目に「日本は露西亜(ロシア)と戦争をする」と予言し死亡したとされている。
「ロシアと戦争をする」とはもちろん「日露戦争」のことであり、件が生まれた1904年に開戦し1905年に終戦している。
件は病気のほか戦争をはじめとする世界情勢が乱れたときにも誕生するとされており、見事に予言が当たった形である。
この件は「名古屋新聞」によると死後剥製にされ長崎の八尋博物館に陳列されている、と記載されているが現在は残されておらず、八尋博物館の閉館とともに消失してしまったものと思われる。
しかし、それにしてもこの件、一度見たら忘れられない凶悪な顔つきをしている。何かを叫んでいるであろう口、小さいながらも鋭い目はまさに鬼気迫る表情で我々に何かを訴えかけてくるようだ。
現在、剥製は残されていないため作り物だったかどうかはわからないが、仮に作り物だとしても作者は何かを訴えるためにこの顔を練り上げたことと思われる。
残された「件の剥製写真」…現代に住む我々はこの顔から何かを読み取れるのだろうか。
(山口敏太郎事務所)