何の変哲もない自動車免許教習用のいわば教育用ビデオプログラムの一種であるが、その“撮影プロセス”に着目すると、その内情はそんじょそこらの映画やドラマ顔負けの撮影環境にて制作されている。
「こうした運転をすると、こうした結果(事故等)になりますよ」
という自動車・バイクの危険運転の再現シーンなどは、もし同じ様な映像=シークエンスを一般の制作会社等が撮影しようとすれば、道路使用許可申請の上でもかなり厳しいハードルと、それに加え安全管理の上で相当数の制作スタッフ人員=人件費に伴う予算を要する。
たかが“教習用ビデオ”とはいえど、実は“映像作品”として考えると相当に優遇された、贅沢な撮影環境なのである。
こうしたは撮影が可能になる理由として、指定自動車教習所は免許交付にあたって、公安委員会(警察)からの指定(認定)を与えられている為、いわば警察の任を代行している組織とみなされる故、なのだ。
教習用ビデオはこうした危険撮影も、危険な道路走行シーン撮影にあたって道路使用許可を認可するor却下する権限を持つ警察組織のバックアップのもとで制作されることにより、難なく可能となるのである。
その他、撮影の危険度だけではなく、VTRの中には本物の警察署やパトカー、消防車などなどが続々登場し、映像作品としての贅沢さにおいては留まるところを知らない。
ちなみに関係者にお話を伺ったところ、撮影現場では常に現場監修担当の警察官たちが鋭い目を光らせており、完成したVTRによく注目すると出演者の顔色が緊張のあまりこわばっているところがしばしば見受けられるとか。
これから、免許を取得される方は教習にあたってVTRをただぼんやりと眺めるだけでなく、「このVTR、いざ撮影するとなるとどうやって撮っているのだろう?」とふと考えながら鑑賞すると、見え方がかなり変わってくるのではないだろうか。
(小野寺浩 山口敏太郎事務所)
【参照】山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou