しかし、やはり体に付き過ぎると“肥満症”という病態に陥る。特に内臓に付く“内臓脂肪”には注意が必要で、動脈硬化や脳卒中の誘因にもなる。体に余分な脂肪を溜め込まないためには、脂肪の特性を知り、脂肪量をコントロールすることが最も重要なのだ。
今回はそんな「体脂肪とはいったい何モノか」を追求してみた。
昭和大学病院消化器内科の担当医はこう説明する。
「体脂肪を一言で表せば、“体の中にある脂肪”。人の体は、30種類ほどの元素で構成されている60兆個の細胞の集合体なのです。この元素のうち、酸素、水素、炭素、窒素の4元素で体重の90%ほどを占めているのです。ですから、人の体は化合物ということもできます。いずれにしても、健康とは、これらの細胞が正しく機能している状態のことをいうのです」
ただし、それら元素はそのまま取り込むことができないので、人間は食べ物や飲み物の栄養素から摂取することになる。中でも欠かせないのは、「タンパク質」や「炭水化物」「脂肪」「ビタミン」「ミネラル」の5大栄養素だ。一般的に脂肪は、これらの栄養素としての脂肪を指すが、既に体内に蓄積している脂肪を「体脂肪」と呼び、栄養素として摂取する「脂肪」とは区分される。
この「体脂肪」はどんな働きをするのか。専門家によれば、(1)エネルギーの貯蔵、(2)タンパク質の節約、(3)体温調節、(4)女性の生理の発現と維持の四つに分けられるという。
まず「エネルギーの貯蔵」だが、体が正常な働きを維持するには、エネルギーが必要だ。
エネルギーは体内の糖質、タンパク質、脂肪などの中に蓄えられる。我々の体が正常な働きを維持しようとすると、このエネルギーが最も重要で、脂肪組織に蓄えられた脂肪がエネルギー源として必要な時に燃焼し、足りなくなるとエネルギーを補給するという重要な役割する。
健康な成人が生きていくために必要なエネルギー量を、1日1200Kcalとすると、全身に蓄えられている体脂肪量は、基礎代謝量にして「140日分のエネルギー」がまかなえる勘定になる。これはマラソンを40回ほど走れるエネルギー量に相当するといわれる。