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プロレスラー世界遺産 伝説のチャンピオンから未知なる強豪まで── 「丸藤正道」最高峰の技術を誇る“方舟の天才”

 ジャイアント馬場の最後の弟子で、多くのレスラー仲間や関係者がその天才性を高く評価してやまない丸藤正道。所属団体のプロレスリング・ノアだけでなく、対外戦においても数多の名勝負を繰り広げ、40歳を迎えてなお一層の活躍が待たれる。

※ ※ ※

 プロレスリング・ノアのトップの証し、GHCヘビー級王座。今秋の時点でこのタイトルを所持しているのは、2015年にプロデビューしたばかりの新鋭・清宮海斗(23歳)である。昭和の古いプロレスファンの中には、その名前すら今ここで初めて見たという人もいるだろう。

 2004、2005年に連続で東京ドーム大会を開催したノアは、ネット上でも〈ノアだけはガチ!〉などと熱狂的なファンを有するメジャー団体の地位にあったが、今はその面影すらない。

 ホームページの興行結果を見ると観衆が1000人を超えることはまれで、かつてノアのビッグマッチといえば日本武道館が恒例であったが、今では横浜文化体育館や後楽園ホールがせいぜい。それですら集客に苦労しているようである。

 ターニングポイントとなったのは、やはり2009年6月、三沢光晴の死であろう。このリング上での惨禍はノア全体に暗い影を落とすことになり、また、三沢とともに団体の柱であった小橋建太も、この時期に故障や腎臓がんの発覚による欠場が続いた。

 三沢が死去する前の2006年には、丸藤正道がgHCヘビー級王座を獲得するなど世代交代の準備も進められていたが、結局、2007年にはその丸藤に勝利した三沢が同王座に返り咲いている。

「人気絶頂の頃でも、ノアの弱点として“地方興行が弱い”ことが指摘されていました。プロレスファンの多い大都市圏では、いち早く丸藤の才能や力量が認められてはいたものの、地方となるとやっぱり名前のある三沢や小橋が看板でないと集客が厳しい。この頃の三沢は、社長業との兼ね合いからまともにコンディションを整えることもできず、常に体調不良といった感じでしたが、それでも団体運営のためにトップを張らざるを得なかった」(プロレス記者)

 丸藤がジュニアクラスの体形であるため、全日本プロレスからの巨漢を重んじる伝統にそぐわないという面もあっただろうか。ともかく、もし、この時に地方興行を犠牲にしてでも丸藤トップ路線を貫いていたならば、ノアの歴史、ひいては日本のプロレス界の歴史も大きく違ったものになっていたかもしれない。

 丸藤には、その重責に応えられるだけの才能が確かにあった。
「GHCヘビー級王者になる2006年の前から、すでにノアの会場においては、丸藤やKENTAの試合ぶりからヘビー級に負けずジュニアの人気も高かった。また、リアルジャパンプロレスでの初代タイガーマスク戦やDDTへの参戦など、対外試合でも高評価を得ていました」(同)

 オリジナル技の不知火に代表されるジュニアならではの華麗さだけでなく、村上一成や鈴木みのるといった格闘技寄りの相手とも好勝負を繰り広げるなど、そのプロレス勘のよさと適応力の高さは相当なものがある。

★新日ジュニア勢を次々に撃破!

 東京スポーツ主催のプロレス大賞においても、丸藤は年間最高試合賞を3度受賞していて、そのうち2試合は他団体の選手との試合であった。普段から手合わせしているわけでもない相手と、大向こうをうならせるだけの試合を繰り広げられるのは、やはり高い才能によるものに違いない。

 2009年12月には、右膝靭帯断絶による欠場明けだったにもかかわらず、昼にノアの興行でメインイベントを務めると、同日夜には新日のスーパーJカップでトーナメント3戦を勝ち上がり優勝を果たしている。

 「圧巻だったのは2010年の新日本プロレス参戦でしょう。1・4東京ドームで4代目タイガーマスクからIWGPジュニアヘビー級王座を奪うと、そこから約半年の間に新日の並み居るジュニア勢を次々と撃破してみせました」(同)

 残念だったのはその前後、故障による欠場を繰り返したこと。これはノア自体の興行とともに、対外戦でも先頭に立って闘い続けたことのツケでもあった。

 「この頃のノアはすでに興行不振に苦しんでいて、丸藤の他団体出場は、いわゆる外貨稼ぎの意図もあったのでしょう。団体を支えるために己を犠牲にしたという意味では、師匠である三沢と同じと言えるかもしれません」(同)

 外ではジュニアとして戦い、ノアでは森嶋猛ら巨漢相手に戦うというのだから、その肉体への負担は相当なものがあっただろう。

 とはいえ丸藤は、今年9月で40歳になったばかり。WWEで活躍する中邑真輔とも同年代で、まだまだ老け込むような年齢ではない。清宮なる新鋭の壁としてだけでなく、丸藤自身が主役となって輝きを放ってくれることを多くのファンは期待している。

丸藤正道
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PROFILE●1979年9月26日生まれ。埼玉県出身。
身長178㎝、体重90㎏。得意技/不知火、虎王、ポールシフト式エメラルド・フロウジョン。

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