「てんのじ村」は、戦前から寄席芸人や大道芸人が多く住んでいたことで知られ、直木賞作家・難波利三氏の小説の舞台にもなった、いわば上方のお笑いのふるさとだ。
「その情緒ある土地を後世に伝えようと、地元の有志や演芸関係者が中心となって『てんのじ村記念碑』を建立したのは1977年。ここで暮らした芸人たちの心の拠り所としても長く親しまれるはずだったのです」(地元記者)
しかし今、石碑はフェンスに囲まれ、内側は雑草が伸び放題の状態なのだ。
「作ったときに誰が管理するのか、もっとしっかりやっといたらよかったんや。あとは誰かが何とかするやろいう気持ちで作ったんが間違いやった」
とは、今も「てんのじ村」に暮らす元浪曲師。
土地は市が所有しているため、整備は簡単にできないというが、この野ざらし状態には“土地柄”も影響しているようだ。
「この一帯は、橋下徹市長時代、西成の特区構想からも外され再開発が進んでいない。誰か先頭に立って旗振りをやってくれる人がおったらええんやけど。一時は公園として解放する話もあったけど、フェンスの鍵を開けといたら野宿する者が出てくる。日中だけ開けるいうことになれば、誰が管理しまんねん、いう話になりますわな」(周辺住民)
昨今、山王町から新今宮の一帯は観光客も多く訪れるようになり、いぶかしげにフェンス内を覗く外国人も多くいるという。
「そうした機を逃さず、歴史を伝えるためにも何とかしてほしい。地元民がまとまって年1回のイベントでもやれば、市も動いてくれるのではないか」(西成区・あいりん地区のボランティア)
新たに陽の当たる日はやって来るのか…。