「わら納豆」は束ねた稲藁に入れた大豆を納豆菌で発酵させる、昔ながらの製法で作られる水戸の名産品。スーパーに並ぶパック納豆に比べ1本200〜300円と高価なため、主に土産用や贈答用が中心だ。そのわら納豆が「藁」不足から20年ぶりに3割ほど値上げされた。
藁不足の原因を、茨城県納豆商工業協同組合はこう説明する。
「わら納豆は、納豆の余分な水分が藁に吸収されるため粘り気が弱くて食べやすく、藁の香りが納豆に浸って風味も出ます。藁不足の直接的な原因は去年の常総地区の大水害で、水戸近辺の稲藁が腐ってしまって使えなくなったこと。長期的には農家の高齢化で、重労働に耐えられなくなったことが挙げられます。そこで県内に3業者ある藁加工業者と水戸市内の納豆メーカーで、藁1束の取引平均価格を15円前後から35円前後に大幅に引き上げ、値上げ分を農家へ還元しようとなった。値上げはこういう意図です」
藁不足に追い打ちを掛けるのが、大型コンバインの導入と国の政策だ。
「高齢化と同時に藁農家の数が少なくなっています。藁を作るには、小型機か手作業で稲を刈り、それを“おだ掛け”という方法で天日干しにするので、1反(1000平方メートル)の田んぼでは、藁の取り入れに1週間〜10日ほどかかる。このおだ掛けが高齢者にはきつい。きついからやめてしまうのです。一方、大型のコンバインで作業をすると20〜30分で脱穀までできてしまうなど効率は抜群なのですが、籾の収穫と同時に藁も切り刻むので藁が残らない。
それと国が助成金を出して後押しする主食用米から飼料用米への転作ですね。県内では昨年、約7000と3年前の6倍弱に急増しましたが、飼料用米は、主食用と違って藁が硬過ぎて加工しづらく、わら納豆には向かない。結局、効率化の推進と高齢化を理由に藁を作らない時代になってきているのです」(同)
名産品も高齢化の波には勝てない。