坂上で並んでからグイッと、もうひと伸びした内容は1/2馬身の着差以上に強かった。「中山は初めて。しかも、スタートしてすぐに坂があり、戸惑ったみたいだけど、よく克服してくれた」と椎名厩務員。「もともとセンスは良かったけど、ここにきての精神面の成長が大きいね」と評価する。
春は、川崎の関東オークスで初のナイター競馬に戸惑い、9着と惨敗。精神面の弱さを露呈したが、ひと夏を越して別馬のごとしだ。
セールスポイントは、「並んだら抜かせない勝負根性」。紫苑Sは、まさに真骨頂を見せつけた。オークスは、女王ブエナビスタの前に7着と見せ場すらつくれなかったが、当時とは馬が違う。立ち回り次第では、打倒! ブエナビスタの夢も膨らむ。
「ビュッと切れる脚はないけど、先行して長くいい脚を使える。直線が平坦の京都コースは、この馬向きだと思う。直線を向いたら早めにスパートして、ブエナビスタの脚を封じ込めたいね」。椎名厩務員は、そう言って目を輝かせた。
飛躍の秋を迎え、調子も上昇一途。それを証明するように、変則日程の今週はけさ13日に最終追い切りが行われ、坂路で800メートル52秒1→37秒8→11秒9(一杯)をマーク。ラストの切れ味は迫力満点だった。「状態だけなら、どの馬にも負けないよ」と椎名厩務員は太鼓判を押した。
「ブエナビスタとは、力の差が大きいし、並ぶ間もなく交わされてしまうかもしれないが、競り合う展開になればチャンスはあるはず。ブエナ以外の馬には、負けられない気持ちですよ」
週末の交通渋滞を見越し、14日には決戦の舞台・京都競馬場に移動。万難を排し、大一番に挑む。