「昨年7月から水産庁が、都道府県ごとに30キロ以上のマグロの沿岸の漁獲制限を実施した。全国の総漁獲枠733トンのうち361トンを割り当てられた青森県は、大間漁協に166トンをあてたが、それでも過去5年の漁獲平均(194・8トン)を下回っているんだ」(漁業関係者)
津軽海峡のクロマグロ漁は7月中旬から始まっているが、豊洲市場に入荷しているのはトロの部分が少ない1匹30キロほどの小型ばかり。初競りで最高値をつけたマグロが278キロだったことを考えると、いかに小ぶりか分かるだろう。
「地域団体登録商標の“大間マグロ”を名乗れるのは30キロ以上ですから、ギリギリのサイズしか揚がっていないわけです。新たな漁獲制限が始まったことで、2001年から毎年秋に開催されていた『大間マグロ感謝祭』も昨年は中止されている。今年は再開を目指しているんですが…」(同)
“ライバル”たちの台頭も脅威だという。
「豊洲を含めた国内の魚市場には、季節が日本と逆で、今が冬のオーストラリアやニュージランドから脂がのったミナミマグロが大量に入荷。米国ボストンからも150キロ以上の大型クロマグロが入ってきている。大間ブランドでも、小型のものはトロの部分が少ない上に赤身の鮮やかさも足りないため、海外産に押されて売れ行きが悪いんだ」(豊洲の仲卸業者)
この状況に頭を痛めているのは漁師だけじゃない。ここ数年、高級寿司店が乱立している銀座の職人からも悲鳴が聞こえてきた。
「銀座の寿司屋のマグロは大間が当たり前だけど、トロの部分が少ない小型じゃ勝負にならない。かと言って海外産を出しても客は納得しない。困ったもんだ」
“海のダイヤモンド”に命を掛ける大間の一本釣り漁師の腕を信じるしかない。