本書のテーマとなっている“エース”という言葉だが、昨今、アイドルグループで話題になる“センター”という言葉と混同されることが多い。しかし、“エース”と“センター”は明確に違うものだと夏まゆみは定義している。
「センターは場所を指します。もっとも注目を浴びる場所であり、ユニットやプロジェクト、会社であれば中心人物になると思います。なので、センターは基本的にはひとつのチームでひとりしか存在しません。ただ、エースは“everybody”です。もっとも輝ける場所を見つけて、いきいきと生きて、自分の魅力を十分に発揮して輝いている人を言います」
エースになれるのは、決して限られた人間ではなく“everybody”。本書は、「アイドルを目指している子でも、いつも上司に怒られ頑張っているサラリーマンにも、あとは中間管理職の方でも、そして、学校で部活動を頑張っている方にも読んでほしい」と語る。ちなみに、夏まゆみは、どの分野のエース? と聞いてみると、“強さのエース”と自身を分析してくれた。
「強くないと人に優しくできないと思うので、そういう意味ではエースだと思います。すでにセンターかもしれません(笑)」
さらに、本書では、具体的にエースとして、彼女が実際に指導したAKB48で、「冷静さと平常心の大島優子」「前向きな高橋みなみ」を例に出し解説している。ただ、そんな彼女たちの魅力も、最初に会ったオーディションの段階では、わからなかったという。ちなみに、オーディションで夏まゆみが注目するポイントを聞いてみた。
「見ているのは、私がオーディションで振りをつけている時と自由に練習させている時です。その時に垣間見えてくるのは、どれほど努力をするかとか、人の目を感じている時と感じていない時の行動に差はあるのかです。この時にすでに“どうやってやるの?”とか隣の人と群れている人は絶対にダメですね。練習すればできることよりも取り組む姿勢です。ダンスは練習すれば誰でも上手になるので」
また、夏まゆみの代名詞ともなっているのが厳しいレッスン。ただ、昨今、世間では「厳しくできない大人」が増えていると言われている。厳しく接すれば新入社員に辞められるのではと萎縮してしまう上司も少なくない。夏は、様々な場面で、「厳しくできない大人」から相談を受けることが多いという。
「難しいことかもしれないですけど、基本は愛情を持つことだと思うんです。でも、すぐに愛情を持つことは難しいと思いますから、徐々にでいいと思うんです。私もAKB48で、すっごく素直ですっごく頑張っていた前田や高橋にはすぐに愛情を持てたと思うんですが、ちょっぴり反抗的だった板野(友美)にはすぐには愛情は持てなかったかもしれません(笑)。でも接していく中で、相手に興味を持って、その子の良さを見つけていくと逆に愛情は深くなっていきます」
現在“人間力向上の指導者”としても注目を集めている夏まゆみ。芸能界に直接関係ない社会人でも、彼女から学ぶことは多いに違いない。