この対中央学院大学戦には日米6球団のスカウトが駆け付け、そのなかに“本命・巨人”も含まれていたのは既報通りだが、『今秋のドラフト会議のツケ』が同投手の去就にも影響を与えそうである。
「基本的に、親族は遠慮するのが慣例ですから」(在阪球団職員の1人)
同投手が原辰徳・巨人監督(52)の甥っ子であることは説明するまでもないだろう。「親族関係者の指名を遠慮する」球界の慣例からしても、2011年のドラフト会議で、巨人が菅野投手を一本釣りするのは既成事実のように捉えられているが、他球団は同投手の調査を再開させた。今秋のドラフト会議で巨人が沢村拓一投手(中央大)を単独指名したのを受け、「巨人は菅野を回避するのではないか?」との声が出始めたからである。
在阪球団スカウトの1人は「現時点の評価」と前置きしたうえで、こう説明する。
「沢村クンと菅野クンは似ているんです。150キロ台の重いストレート、スライダー系の変化球、落ちる球…。持ち球もほぼ一緒で、ともにパワータイプの右投手です。今年の4位指名の小山(雄輝=天理大)クンも同様です。巨人の投手スタッフを見渡しても、東野(峻)がいるし、同じタイプの右投手を2年続けて獲る必要があるのかどうか…」
今秋のドラフト会議前でも“奇妙な情報”が交錯していた。「巨人が斎藤(佑樹)に乗り換えるのではないか!?」というものだ。この話は、沢村の1位入札を表明した後に噴出した。「斎藤の人気は捨てがたい」と思ったからだろうが、そこには、「沢村と、来年1位予定の菅野が似ている」なるスカウト評も含まれていた。
また、沢村に限らず、斎藤や大石、中日が1位指名した大野雄大(佛教大)に対し、巨人も複数のスカウト体制で視察してきた。1位候補に2人以上の担当スカウトを置くのも球界の慣例だが、現時点で巨人は菅野を複数体制で追い掛けていない。こうした状況が「菅野の指名を回避するのではないか?」と見られる根拠だが、こんな指摘も聞かれた。
「巨人は中央大学にも強いネットワークを持っています。沢村サイドが『巨人志望』を明言したのはそのためで、他球団は沢村クンから撤退せざるを得ませんでした。沢村クンの単独指名を『貸しを作った』と捉える球団もないわけではない…」(球界関係者)
他球団が親族選手の指名を辞退するのはあくまでも慣例であって、それが無視された前例もないわけではない。近年では、巨人も中日に実兄と選手寮・寮長の父親がいた堂上直倫内野手の競合入札に参加している。沢村を追い掛けてきたライバル球団が「貸しを返してもらう」と“宣戦布告”したとしても、決して不思議ではない。
今年のドラフト指名選手の入団交渉はこれからだが、来季の1位候補を巡る情報戦はすでに始まっている。