中小企業社長のSさんは不況の波に呑まれて事業を縮小、社員のリストラを敢行し、気分も落ち込み気味だった。
悪いことは続くもの。今度は奥さんが重篤な病気にかかってしまう。普段はさほどお酒を飲まなかったSさんだが、夜になると飲まずにはいられなくなった。
酒量は増えるばかりで、いまではウイスキーのボトル1本をひと晩で空けてしまうほどだ。
60歳を過ぎて波瀾万丈の人生になるなんて思ってもみなかった。お酒でストレスを解消し、よく眠ろうと思ったら、
「今度は足がつるようになって眠れないんだ」
Sさんが言うには、布団に入って眠気が襲ってくると足がつるという。かかとを伸ばし、ふくらはぎをもんで治ったと思って眠りにつくと、またキューッと足がつる。結局、ひと晩中眠れなくなるらしい。
足がつるとは、本人の意志に反して足の筋肉が突然に強い痛みをともなって収縮、またはけいれんする状態をいう。ふくらはぎがつる場合は「こむら返り」とも呼ぶ。
神奈川大学・人間科学部人間科学科准教授の衣笠竜太先生が言う。
「足が“つる”という現象は、ふくらはぎの筋肉が、ある要因で縮むとき、アキレス腱がその反動で伸びるため、そのアキレス腱の腱紡錘(けんぼうすい)が、腱が伸び過ぎないように筋肉を制御する働きをするために起こります。そして、寝ているときに起こりやすいのは、ふくらはぎの筋肉が収縮しがちで腱紡錘の働きが低下しているためで、冷えたり、足の筋肉を使い過ぎたり、水分が不足したりすると起こる」そうだ。
足がつりやすい病気としては「閉塞性動脈硬化症」がある。
主に足の太い血管が動脈硬化を起こして詰まってしまう病気で、軽い場合は下肢の冷感や色調の変化がみられ、少し重くなると痛みのために歩き続けることが困難になる。疼痛は安静時でも起こり、やがては下肢に激痛が走り、最後は下肢が壊死し、足の切断に至る怖い病気である。
閉塞性動脈硬化症かどうかは、次の簡単な検査でわかる場合がある。
まず足を支えてもらうか、壁にかけるかして足を上にあげる。そして30秒から1分間、足首をグルグルと回す。両足の色を確認して片方だけ白くなるようなら病気の疑いがある。
その場合、早めに病院で診察してもらうことが大切だが、軽い場合は次の方法で改善することもできる。
「1分間歩いて3分休む」を10回繰りかえす。1週間に3日続けることで新しい血流が改善するという。
その他、脳卒中や心筋梗塞など重大な疾患が隠されていることもあるので、自覚症状を見逃さず、心配なら医療機関に行くことをお勧めしたい。