今、キー局関係者が顔を会わせれば、こんな冗談が飛び出す有様だとか。
5月29日、NHKのテレビ番組を放送と同時にインターネットに流す「常時同時配信」を可能にする改正放送法が可決された。2019年度中にはパソコンやスマートフォンでNHKの番組をリアルタイムで視聴できるようになる。今回の法案可決に焦りまくっているのが民放局だ。
「まさにNHKの独り勝ち時代になるからです。今後、民放局はこれまで経験したことのない危機的状況に追い込まれます」(民放キー局編成マン)
日本民間放送連盟(民放連)は現在までのところ、地上波とネットの常時同時配信を実施する戦略はゼロベースなのだ。
「24時間常時同時配信するには、莫大なコストがかかるんです。初期投資で数十億円、ランニングコストが年間数十億〜100億円程度とみられている。ちなみに、これはハード面だけ。他に人件費もかかるわけです。予算が潤沢なNHKでなければ、絶対に成立しえない事業ですよ」(事情通)
結果、24時間常時同時配信を実施するNHKの存在意義だけが注目される時代になるという。
「ネット民や10〜20代の若い世代は、数あるメディアの中で『NHKのみを支持するようになる』とのリサーチ結果があるほどです」(大手広告代理店系シンクタンク研究員)
もちろん、民放局も同時配信を実施していないわけではない。キー局を中心に共同ポータルのTVer(ティーバー)や日本テレビが主導するhulu(フールー)などを運用していることは、改めて説明するまでもないだろう。
「地方局でさえも配信プラットフォームにコンテンツを提供するなど、技術革新を進めています。赤字覚悟で災害時の報道や注目されるスポーツイベントなどでは同時配信を試行している」(制作会社関係者)
もっとも、“受信料”という打ち出の小槌を持つNHKと違い、民放は収入の大半を番組間に放送するCM収入でまかなっている。参考までに、昨年度の地上波テレビ放送の総広告収入は約1兆8000億円。
民放局の危機的状況に対し、総務省もNHK独り勝ちを懸念しているという。
「ネット業務の総制作費は受信料収入の2.5%以下にするという基準を設けたが、法的拘束力は一切ない。NHKは鼻っから順守する気などありません。常時同時配信の本当の目的は、受信料の取りこぼしをなくすためですから」(関係者)
10年後のテレビ局勢力図はどう変わっているのか。