「敵陣営のスタンドからも拍手が贈られました」(スポーツ紙記者)
これが、中日経営陣の求めていた光景でもあった。苦労人のベテランが長い歳月を掛けて大記録を達成する。その姿にファンが共鳴し、観客増員へと繋がっていく…。
「次の目玉は、山本昌ですよ。49歳、50歳での先発勝利となればギネス級です。昨年オフの時点で、山本のもとには海外メディアからの取材も殺到していました」(中京地区在住記者)
いまさらだが、中日には“レジェンド”が多い。いや、多すぎる。和田、山本昌のほかにも、川上憲伸(40)、岩瀬仁紀(41)、荒木雅博(38)、森野将彦(37)、小笠原道大(42)といったところが在籍している(年齢は今季誕生日のもの)。谷繁元信兼任監督も今年45歳になるが、現役引退説は否定している。チーム関係者によれば、契約更改の席で「本人から引退を言い出さない限り、契約続行です。もっとも、落合(博満=62)GMは容赦なく減俸提示しますが」とのこと。一方で、2014年オフには15名の中堅や若手選手が戦力外になっている。
「全ては落合GMの考え方次第。可能性がないと見た中堅、若手は容赦なく切り捨てますし、練習をしない選手は大嫌い。レギュラーになるまで苦労しても、長くレギュラーポジションを確保できる選手になれとも考えています」(球界関係者)
その通りだとすれば、中日の世代交代がなかなか進まなかった理由はベテランを脅かせなかった中堅、若手にも責任があるというわけだ。
「大袈裟な話ではなく、中日のベテランは目の下にクマを作って球場入りします。『疲れた、ダメだ』を連呼していますが、練習をしながら精気を取り戻していく。生き残ったベテランたちは『疲れた』とは言うものの、球場入りする時間も早いし、岩瀬や山本昌は一年中練習しているんじゃないかな」(前出チーム関係者)
生き残ったベテランたちはもっと評価されてもいいのではないだろうか。彼らの姿は共感を呼ぶ。2000安打を達成した和田にしても、西武時代にレギュラーポジションを獲ったのは30歳になってからだった。
しかし、ベテランの頑張りが観客動員数のアップに直結するかといえば、必ずしもそうではない。昨季は200万912人を動員したが(主催ゲーム)、主催最終戦でやっと200万人を突破したのが実情だ。ベテランが健在なだけでは人気に繋がらない。しかし、そのベテランが記録を達成すれば、箔付けがされる。マスコミへの露出度も増え、経営陣も「球団の宣伝になれば」と考え方を変えてきた。ベテランたちは練習熱心さが評価されて契約更改となった部分もあるが、今季は和田の2000安打、谷繁兼任監督の最多出場記録、山本昌のギネス挑戦が掛かっていた。こうした状況が他のベテランの残留にも繋がったのだろう。
しかし、この先の何年もベテランたちがチームで成績を残せるわけではない。戦力、経営ともに、ベテランに頼りきった状況を打破する若手が現れなければ、中日のペナントレース後半戦はつまらないものになってしまいそうだ。