「ジョッキーにとっては最高に乗りやすい馬。オレが調教師になったらこういう馬を育てたい」
数々のスターホースにまたがってきた福永騎手に、こう言わしめるほどの才能の持ち主がサクラメガワンダー。前走の金鯱賞では、さらにパートナーをメロメロにさせる成長ぶりを披露した。
福永は金鯱賞のレース前、「この馬はどうしてもコーナーでスピードがつかない。どうみても小回りはダメ」と半ばあきらめ気味だった。それもそのはず。小回りの中山、中京、札幌、函館は合わせて5戦0勝と散々な成績。3着に入るのが精いっぱいで、これまで大の苦手としていた。
それが3角から早めに動き出し、最後は2着に1馬身1/2をつける完勝。コーナーでスムーズにスピードアップし、アッサリと“鬼門”をクリアしてしまった。それも、「本番はあくまで次の宝塚記念」と陣営は叩き台と位置づけていた一戦。関係者の想像以上に、メガワンダーは6歳になった今でも進化を遂げている。
もちろん、その背景には厩舎の工夫があったことも取り上げなければならない。かつてのメガワンダーは追い出し時にアゴを上げる悪癖があった。しかし、福永騎手を競馬とケイコで乗せることで矯正させてきた。杉村助手はこう説明する。
「ユーイチにつきっきりで乗ってもらっているおかげで、だいぶそれも改善されてきた。さらに、スパッという切れ味をGI仕様にするための調教もやっている。最近、その効果が手に取るように分かる」
難攻不落のディープスカイ攻略法も、「相手はジワジワとしか伸びないタイプ。一瞬の切れ味で相手を交わせれば、必ずチャンスはある。そのためにユーイチに毎回、乗ってもらってるんだからね」とバッチリだ。
阪神コースは4勝中3勝が重賞という相性の良さ。持ち前の切れ味をGI仕様に研いできたサクラメガワンダーが、季節遅れの“開花宣言”だ。
【最終追いVTR】福永騎手を背に栗東坂路で追われ、800メートル52秒1→38秒5→12秒9(G一杯)。1週前は物足りない内容だったが、今朝の動きはなかなか鋭い。終いやや苦しそうな雰囲気を見せながらも、脚を伸ばしきったところに好調さがうかがえる。