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市橋容疑者を乗せた車に突撃したTBS社員現行犯逮捕の裏側

 千葉県警行徳署で12日、英国人女性死体遺棄事件で逮捕された市橋達也容疑者(30)を送検する際、移送される場面を突撃取材したTBS社員の代田直章ディレクター(30)が現行犯逮捕された。警備する警察官を突き飛ばすなど公務執行妨害の疑い。さまざまな場面で過熱報道が叫ばれ、取材する側、される側双方のモラルが問われている。逮捕の必要はあったのか、事件の裏側を追った。

 市橋達也容疑者が逃亡中に住み込み勤務していたと公開写真で気付き、警察に通報した建設会社が、取引先から相次いで契約を打ち切られていることが13日分かった。
 建設会社関係者によると「社員の身元もきちんと調べない会社とは取引できない」と契約解除を通告される例が続いた。この関係者は「通報すれば、取引停止もあるだろうと事前に話し合った。だが社会人の義務として通報した」と打ち明ける。数社からは取引を完全に打ち切られたほか、一時的な取引中止や新規契約交渉打ち切りもあった。警察官からは「市橋(容疑者)がここで働いた金で整形したことが整形外科医による通報を促し、逮捕につながった。犯罪人を雇っていたといわれるかもしれないが、気にすることはない」と励まされたという。
 午前11時半、市橋容疑者を乗せたワンボックスカーが同署裏口から出た路上で“事件”は起こった。複数の警察官が少しでも車に近づこうとする報道陣を必死に制御。しかし、車が路地を右折すると、規制のロープを越えた一部報道陣が車道になだれこんで車に急接近。引き離そうとする警察官と揉み合いになり、現場は大混乱した。

 そのとき、ハンディーカメラを持った代田ディレクターが警察官(24)の制止を突き飛ばして振り切り、運転席側のガラスを数回叩いたという。「逮捕だ! 逮捕」と警察官の怒号。すぐに手錠をかけられ、警察官に引きずられるようにして署内に連行された。
 TBS関係者は首をかしげながら「(他にも飛び出した報道陣がいるのに)なぜ彼なのか納得いかないですね。釈然としないです」と同署の対応に不満を口にする。
 しかし、「カーテンが閉まっている車にあそこまで接近する意味がわからない」(スポーツ紙カメラマン)と疑問を呈する声も。女性記者が「彼を逮捕するなら、みんな飛び出したのだから、みんな逮捕じゃないですか」と厳しい口調で同署関係者に食ってかかると、今度は別の記者から「みんなは飛び出してないだろ」と声がかかり、一同苦笑いする場面もあった。
 午後2時半、同署から逮捕事実について説明があった。「なぜ代田ディレクターだけが逮捕なのか」との質問には、「一番最初に飛び出し、一番悪質だった」と答えた。同日夜、同署は「逃亡の恐れ身元がはっきりしている」と釈放。代田ディレクターは釈放後、「何か撮影しなければとの思いに駆られた。自分が一番先に車の前に立ちはだかった意識はないが、申し訳ないと思っている」と反省を口にしている。
 TBS関係者らによると、代田ディレクターはワイドショーなどを制作する情報制作局に所属。みのもんたがキャスターをつとめる「みのもんたの朝ズバッ!」を担当している。全国紙社会部記者は「警察側は報道向けに市橋容疑者の顔を見せている。それでも車まで追いかけたのは“みのの番組”というプレッシャーではないか」と話す。TBS広報部は「取材中に起きたことで事実関係を確認中」としている。
 夕刻、同署の取材対応にTBSは出入り禁止を食らった。「書類送検するかは今後の捜査次第」と行徳署。行き過ぎた取材なのか、それとも警察の必要以上の公権力行使か。双方に冷静さが求められる。

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