『喜劇の手法 笑いのしくみを探る』(喜志哲雄/集英社新書 735円)
攻撃的な態度は格好いい、という考え方は間違っている。もちろん、上司や先輩、あるいは町内会などの付き合いの言いなりになって、いいように使われたり、おとなしくじっと我慢していることはつらいだろう。しかし、だからと言って極端に不満を解消するために反動のように、ギャーギャーわめいて感情を爆発させるのは格好悪い。
最近はインターネット上でそういう不満をSNSなどで爆発させる人が増えているようだ。とてつもなく格好悪い行為なのでやめていただきたい、と切に思う。攻撃的に政治家を批判することを書いて、何かしらパンク・ロッカーのような格好いいことをしているとご当人は思っているのかもしれないけれど、読む側からすると全く共感できない。他人から見れば格好悪いのである。本当に政治のことを考えているのではなく、政治家批判にかこつけて、日々のうっぷんを晴らそうとしているだけではなかろうか。
全く殺伐としている時代だ。しかし、和やかになりたい。笑ってホッとしたい。そんなときに、本書『喜劇の手法』を読んでいただきたい。
著者は1935年生まれで英米演劇に関しての著書をたくさん書いている。その延長線でシェイクスピア、モリエールなどの喜劇の面白さを分析している。「そうか、だから喜劇は面白いのだ」と思える。殺伐とした気分を解消できる本だ。
(中辻理夫/文芸評論家)
◎気になる新刊
『ぱるる、困る。』島崎遥香ファースト写真集(集英社・1470円)
AKB48の次世代エース候補“ぱるる”こと島崎遥香のファースト写真集。
水着&バックヌードほか、彼女の代名詞となった“困り顔”が、これでもかというくらい満載されているので、抜きどころに“困る”ことはない(笑)。
◎ゆくりなき雑誌との出会いこそ幸せなり
テレビを観ていたところ、「石」の鑑定をしていた。河原や山中に何げなく放置されている石だが、根強い収集家が多数おり、産地によっては思わぬ高値がつくこともあるらしい。
愛好家向けの情報誌もある。月刊『愛石』(あいせき/石乃美社・1350円)だ。
石を愛でる趣味は南北朝時代の後醍醐天皇にまでさかのぼることができ、その文化を継承する愛石団体が今も全国に存在する。同誌は展示会開催や情報交換の中心的役割を担っているという。
最新号では庭石などに用いられる京都の名石「加茂七石」の紹介や、浜に打ち寄せた石が波でこすれあい、ゴロゴロと音がすることで知られる鳥取県琴浦町「鳴り石の浜」探訪記、天然記念物の石である「名寄鈴石」を産出する北海道・九度山のルポなど、旅愁も同時に誘う記事を掲載。
石の知識と共に、地方特有の文化や町の歴史にふれることができるだろう。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)
※「ゆくりなき」…「思いがけない」の意