「掛布二軍監督も驚いていました。球団スタッフによれば、オーナーは午前中に本社へ出勤し、仕事もこなしていたそうです」(在阪記者)
坂井オーナーのその日のスケジュールに二軍視察はなかった。しかし、「是非見ておきたい」と言い、急遽決定。秘書が掛布二軍監督に連絡を入れる前に本人が到着してしまったという。そして、二人は球場ブースに入り、練習を見守りながら“虎の近未来”について語り合ったそうだ。
「坂井オーナーは巨人が三軍制を始めることに関心を示していました。ソフトバンクに倣っての三軍制で、それが成功すれば、ものすごい戦力になります。平たく言えば、二軍を2チームを持つことなので」(球界関係者)
時間にして約1時間半、表情こそ穏やかだったが、坂井オーナーは虎の若手育成に“不安”も抱いていた。阪神首脳陣は金本知憲新監督(47)にチーム再建を託した。監督招聘の交渉中には、金本監督からも、中堅、若手の伸び悩みが指摘され、今後の二軍の在り方が非常に重要になることで意見が一致した。
もっとも、金本監督から「二軍監督に誰が相応しいか」という意見は出なかった。GM付け育成&打撃コーディネーターだった掛布氏を昇格させたのは、その指導内容が「分かりやすい」と選手から好評だったからである。そして、昔ながらの阪神ファンによる根強い人気は否定できなかったのだ。
「オーナーは掛布二軍監督がどんなビジョンを持っているのか、きちんと聞いてみたかったのでは。それが突然の練習視察の目的だったと思います」(同)
しかし、掛布二軍監督はきちんと説明できなかったという。勝ちながら育てるというのは永遠の難題だが、掛布二軍監督から具体的なビジョンは聞けなかったそうだ。
「近年、阪神は一軍と二軍の首脳陣同士のコミュニケーションがうまくいっていませんでした。そのパイプ役として、二軍監督だった平田勝男氏を一軍ヘッドコーチに送り込み、来季もチーフ格として金本監督を支えることになりました。現時点で、金本監督は年上の掛布二軍監督に気を遣っているし、衝突もない。それだけでも、いままでと違って期待が持てると思いますが」(前出記者)
掛布二軍監督は秋季練習中にマスコミに囲まれると、一つの質問に対して30分以上も返すなど饒舌だった。タテジマのユニフォームに再び袖を通すことのできた喜びからだと思うが、与えられた職務は重大だ。
ライバル巨人の三軍制以上に、自前戦力を一軍に送り込まれなければならない。坂井オーナーはこれまでも二軍視察を行ってきたが、来季はその回数が増えそうである。