というのも、千秋楽の昼過ぎ、鏡山審判部長(元関脇多賀竜)が北の湖理事長に、「14日目まで全勝できている。先場所も全勝優勝しているし、すでに星は十分(合格)。これは審判部の総意です」と、26日の番付編成会議に合わせて理事会を開くように要請。ところが北の湖理事長は、「ちょっと待て。その話は結びの相撲を見てからだ」と、厳しい表情で申し入れを差し戻したのだ。
この理事長発言を聞いた一部の親方たちから、「これでも横綱にしないのなら、日本人力士は永遠に横綱にはなれない」という声も上がっていたが、なぜ北の湖理事長はそんなに日馬富士の横綱昇進に慎重だったのか。
「問題横綱、朝青龍が暴行事件を起こして引退して以降、大相撲界は横綱の品格が一種のトラウマになっています。日馬富士は“ミニ朝青龍”とも呼ばれ、気迫を全面に押し出した激しい相撲が身上。この秋場所10日目にも、高安を左からの強烈な張り手でKOしている。また、勝負がついたあと、相手を突き飛ばすダメ押しも多く、過去には審判部に呼び出されて注意を受けたこともある。自分勝手で乱暴な横綱はもういらないという共通認識が親方たちにはあり、それが北の湖理事長の発言につながったのです」(相撲記者)
また、ある協会関係者も言う。
「土俵外の行動も問題です。朝青龍はもう大相撲界とは無縁の人なんですが、日馬富士は入門以来、兄のように慕い、この場所中も電話やメールでアドバイスを受けていました。日馬富士自身、朝青龍に負けず劣らず“遊び好き”という話も聞こえてくる。こうした日馬富士の行動を不愉快や、不安に思っている人間は多いのです」(協会関係者)
新横綱日馬富士の実力はともかく、品格はあきらかにB級。大相撲界はまた厄介な火種を抱え込んでしまったのかもしれない。