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福島原発「作業員6000人」の現実 最終弾 ジャーナリスト・水石徹 消えない放射能の疑い! 作業員に発症した深刻な病名(1)

 尾てい骨の瘡蓋は、当初診断通り、疥癬虫(ヒゼンダニ)感染によるものなのか。それとも、その後に指摘された、放射能の影響なのか−−。
 瘡蓋の精密検査結果が原発作業員・桜井正雄さん(仮名)に伝えられたのは、7月15日のこと。
 「ホッとしたのも束の間、心配の種が前より膨らんでしまった」
 と、桜井さんの心中は穏やかではない。

 虫(ヒゼンダニ)じゃなくカビにやられたようだ。専門用語で“白癬菌”というらしいが、これがカビの一種だってことだ。わかりやすく言うと、サオ(陰茎)やフクロ(陰嚢)にできる“いんきんたむし”と同じものだが、医者からは、
 「尾てい骨の上にだけ感染するのは珍しい」
 と言われた。
 風通しの悪い、湿ったところに感染するのが白癬菌の特徴だそうだ。原発作業員になってからは全身汗まみれの日が多い。特に股ぐらはジトジトになっている。まあ、白癬菌にとっては願ってもない環境だ。原発作業員には職業病みたいなものだね。

 いんきんたむしと同じなら、そんなに大騒ぎすることもない。そのうち治るだろうと、ひとまずホッとしたよ。だけど、最後にこう言われたからまた、ビクッとしてしまった。
 「白癬菌は通常、飼い猫から感染することが多い。しかし、放射能とまったく関係ないとは言い切れない」
 ってね。よくよく聞いてみると、こういうことらしい。チェルノブイリ原発が爆発(1986年)して、日本とは比べものにならないほど広い土地が放射能に汚染された。そこで俺と同じ白癬菌の感染者がものすごく増えているらしい。医者はこう言っていた。
 「日本と違って、ロシアではそうした研究報告がすでに出ている」

 ということは、俺の白癬菌感染だって放射能と関係あるかもしれないってことだ。尾てい骨の上に感染するのが「珍しい」と言うなら、被曝特有の感染かもしれない。
 ロシアの放射能汚染地帯で増えている感染者は、どの部分に感染しているのか、そこを知りたいし、日本でも早く調査、研究を進めてほしいね。このままほったらかしにしていたら、事故原発敷地内は“いんきんたむし村”になっちゃうかもしれない。口に出さないだけで、すでに相当な数の感染者がいるかも。

 放射能も熱中症も怖いけど、白癬菌にやられると、ものすごく痒い。痛いのはまあまあガマンできるけど、痒いのはどうにもならない。だから、やっかいだ。寝ても覚めても尾てい骨をカリカリ掻いていると、尻尾が生え出てきて猿になる夢を見ることがあるんだよ。
 作業員宿舎で夢にうなされ、同じ部屋の連中から、
 「猿みたいな鳴き声を出していたぞ」
 とからかわれたことがある。連中には笑い話で済むかもしれないが、俺にとっては深刻な問題だ。『美味しんぼ』の“鼻血”問題はピンとこないが、白癬菌感染は現実だからね。

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