12年12月に失効したポスティング制度に関して、NPB(日本野球機構)とMLBは協議を重ねてきた。新たな案では、「入札額1位と2位球団の間の額を落札金額とする」「交渉が決裂した場合は米球団側に罰金を科す」などの新条項を盛り込み、ほぼ合意。日本シリーズ終了後には、新制度を締結する手はずになっていた。
ところが、11月1日、プロ野球選手会(楽天・嶋基宏選手会長)側が、「日本側にメリットがない」として、新制度を締結しないようNPBに待ったをかけた。
選手会側は14日、現在9年の海外FA権取得のための期間短縮などの要望を添えて、2年間限定で新制度を受け入れる方針を示し、ようやくNPBと選手会の意見が統一された。
だが、さんざん待たされたMLB側は態度を硬化。15日(現地14日)、オーナー会議が終わった後に、MLBのロバート・マンフレッド最高執行責任者(COO)が新制度案を白紙に戻し、修正案を提出すると発表した。「日本側の返答に時間がかかりすぎている。情勢は変わった」(ロバート・マンフレッドCOO)。
MLB側も決して一枚岩ではない。「高い入札金を払っても、いい選手が欲しい」とする資金力のある球団に対し、資金がない球団は高額なポスティングには参加すらできない。改めて、修正案をつくるとなると時間がかかる。できた修正案が、日本側に不利な内容に変更されている可能性もある。そこから、日米間の合意、さらには選手会の了承も必要となれば、相当の時間が必要で、越年する恐れもある。
そうなると、米球団側は来季の戦力補強活動も進行しており、楽天の球団事情もあり、田中が今オフの米移籍を断念せざるを得ない状況にも陥りかねない。日米間の協議のスピードが、田中の動向に影響を与えそうな雲行きだ。
(落合一郎)