毎週日曜朝に放送中の特撮TV番組にスーツアクター(スーツや着ぐるみの中に入ってアクションや演技をする俳優)としてレギュラー出演している野川さん。中学生の時は、柔道で県大会・優勝を果たす程の実力者であった。しかし、母親に連れられて行った劇団四季に感銘を受け、高校より歌とバレエに打ち込む。その後、本場ニューヨークで観たミュージカルに圧巻され、帰国後は“日本人は日本のもので勝負しよう”と思い立ち、時代劇を見始める。そして偶然にも、JAC・プロデュースの時代劇を観劇したことがきっかけで、20歳で同養成所に入所した。そしてアクションの現場にデビューした5年目に、「スーパー戦隊」シリーズ・『魔法戦隊マジレンジャー』のメインキャラクターに抜擢される。
「初めてレギュラーで映像作品に出演させて頂いて、頑張ったんですが思った様にいかないことも多く、自分の未熟さを痛感しました」
しかし翌年に離れてみて、特撮番組の現場がすごく勉強になっていたことに気付いた。だが、その矢先に東京ドームシティアトラクションズのスカイシアター(現:Gロッソ)で、ヒーローショーに出演している最中に、全治10か月の大ケガを負ってしまう。
「今でもあの時ケガをしなければ…と思います。でも入院して動けなくなって、私は常に身体を動かしていないと生きている価値がないんだと気付きました。やりたいことに向かっている自分が好きなんです」
退院後はリハビリをしつつ、もう一度キャラクターを演じたい一心で、スカイシアターのショーで声を当てたり、特撮番組で補助(キャラクターにお面を被せたり、スーツを着せる)や兵隊の仕事を再開する。そしてその姿が制作陣の目に留まり、再び『炎神戦隊ゴーオンジャー』のメインキャラクターを射止める。その後も同シリーズに立て続けにレギュラー出演するなど順風満帆に思われたが、『海賊戦隊ゴーカイジャー』で再びアクシデントに見舞われ、入院生活を送る事に。
「男と女ではピークが違うので、女性は30歳前後で辞めてしまう人が多いんです。私もちょうど30歳を過ぎた頃だったので引退も考えました」
一度は引退の二文字が頭の中を過ぎった彼女に、『特命戦隊ゴーバスターズ』の出演オファーが届いた。しかもそれは、自身初の悪役の打診であった。
「悩んだのですが…実は元々ワルの役をやってみたかったんです。手術後でしたし、年齢も来ていたし、この役は挑戦でしたね」
その後は再び『獣電戦隊キョウリュウジャー』、『烈車戦隊トッキュウジャー』、そして現在放送中の『手裏剣戦隊ニンニンジャー』でメインキャラクターを務める。今や彼女は「スーパー戦隊」シリーズの顔となった。
「このお仕事は、キャラクターのお面を被ってその動きや表現が出来ていれば、自分の年齢に関係なく16歳の女の子やお姫様になれるのが面白いんです」
また、演じる際は“女の子”と言うことでアクションを括りたくないと話す。
「キャラクターの性格には合わせますが、“女の子だから”と言って可愛く演じるのではなく、女性の私でしかできない“リアル”な戦う女の子を心掛けています」
デビューして15年。先輩方に引っ張ってもらい、『がんばって着いて行こう!』という想いで続けてきた。
「日々ケガと戦って、身体のメンテナンスをして…常に必死です。私は一生続けるためにこの世界に入ったので、第一線じゃなくても表現方法が変わっても、何らかの形でやっていけたらいいなと思います。自分が頑張ることで、この業界に女性が増えたら嬉しいです」
『かっこいい!』と言われたくてこの仕事をしていると話す野川さん。男性顔負けのアクションを披露し続ける彼女に憧れ、女性のスーツアクターが増える日は近いかもしれない。