(1)「希望の灯 消さずアラフォー チョコを撒き」(詠み人・25歳、OL)
昨年の流行語大賞ともなったアラフォー。アラウンド40といえば、リッチシングルを謳歌するのはあくまで表の顔で、その実、人生を賭した最後の婚活に気合が入っていそう。ましてバレンタインは正真正銘の決戦の日。少しでも芽のありそうな向こう三軒両隣に義理チョコを装った“ちょびっとだけ本気チョコ”を配り歩く。そして相手の反応を上目遣いでシビアにうかがっている。そんな情景をコミカルに詠んだ句かと思いきや、よく見れば詠み人は25歳のOL。…とすると、なりふり構わない40女を嘲笑しているか、あるいは意中の男性にちょっかいを出す年増女に恨みを込めて詠んだものともとれる。いきなりディープな句じゃないですか。
んで、本物のアラフォー女性が詠んだ句はこれ。
「ほうびチョコ 彼用みたいな 顔で買う」(40歳、自由業女性)
なんでもここ数年、バレンタインにあえて自分用のチョコを購入する女性が増えているという。チョコ業界ではこの現象を「マイセルフチョコ」と言うそうな。「バレンタインに合わせて有名ショップは新製品や限定品を投入するから、あげるのもったいなくなっちゃう〜」とは32歳OLの弁。詠み人にカレシやダンナがいるのか知ったことではないが、句を読んでうら寂しい気持ちになるのは男性心理か?
そして次もアラフォーによる句。
(2)「メタボには 空箱だけの エアチョコ」(42歳 無職女性)
…この妙な字足らずが詠み人のすべてを表している気がしてならない。なぜに終わりに「だ」とか「を」を付けないのか? 一読すると、メタボのダンナに「あなたにはエアチョコよっテヘッ♪」的な冗談をかます主婦像を喚起させるが、実は詠み人もマイセルフチョコ派なのではないか? そう仮定すればメタボのおのれに罰を与えるアラフォーの姿が浮かび上がる。いやいや、最後に「だ」を付けるのすら面倒くさがる作風からは、決してアラフォーなんて格好いいシロモノではなく、「オバちゃん」な詠み人の姿が伺える。字足らずの結果、目立っているのは事実で、そこがまたオバちゃんぽいのだ。
女性編もさらに歳を重ねると…。
(3)「ガソリンも チョコもセルフの 味気なさ」(56歳、主婦)
悲しくなってきました。ガソリンもセルフ、チョコもセルフ、自分を慰めるのもセルフ、今は何でもセルフの時代。セルフチョコの包装を開いて、丁寧にたたんでいるときのむなしさが良く描けている。ガソリンはセルフでも良いけれど、やっぱりチョコは気になるあの娘からいただくべきものだ、と再認識。
一方、男性の句は…。
「言葉より 上手に口説いて くれるチョコ」(62歳、自営業男性)
サラッときれいごとを詠みあげるところはジェントルマンか。しかし、「確かにチョコに口説かれたよ。相手もその気なんだなと。手作りチョコだもんね、いいんだよね、オレが本命ってことで。それでコクったら見事玉砕。本命彼氏は別にいるって? じぁあ手作りチョコなんて渡すんじゃねーよ! あんたのは100均チョコを溶かして型入れしただけだって? 知るかっ、そんなの見比べなけりゃわかんねーっての。見事上手に口説かれちまったオレの気持ちはどこにぶつければいいんだよ〜ン」…な〜んてシーンも思い浮かぶ。
次はお父さんの句。
「チョコレート パパに『も』あげる 『も』が不満」(53歳、会社員男性)
「も」は確かに不満だろう。たとえ本命彼氏の練習台であったとしても、娘からチョコをもらいたい。家ではまともに話もしてくれなくて、洗濯だって別々。これで今年はチョコなしなんてことになったら…。最後の手段は妻に根回しして、パパに「も」チョコをあげてもらうように言ってもらうことか。お父さんの悲哀を一字に込めた秀作。
主催のメリルチョコレートカムパニー広報担当によると「応募者は小学生から80歳代までで、男女比も半々くらい」とのこと。老いも若きも恋に惑う。結局、そんな自分が生涯好きなんです!?
他の入選作は同社HP http://www.info-ginza.com/mary/を参照。