日曜日の庶民の娯楽が地獄絵図と化した。30歳ぐらいの男が放火して逃げるのを客や従業員が目撃しており、男性客のひとりは「火だるまになって逃げる人がいて、これは尋常じゃないぞと思った」などと話している。犯行は手際よく行われている。
大阪府警捜査1課は現住建造物等放火と殺人、殺人未遂の疑いで此花署に捜査本部を設置。逃走した男の行方を追うとともに客や従業員から事情を聴き、現場検証して出火当時の詳しい状況を調べる。同店をめぐるトラブルは確認されていないという。
捜査本部や市消防局によると、店には約140台のパチンコ台と約40台のスロット台が置かれ、出火当時、客や店員約100人がいた。業界関係者によると、「オレだけ出玉が悪い」などと店員に因縁をつける客は少なくない。店内で暴れたり、脅し文句を吐き捨てるケースもあるという。放火が客や従業員ら個人に対する恨みであれば、店内を探す必要があるが、そうした様子はみられない。店もしくはパチンコに対して恨みを持っていた可能性が高い。
パチンコ・スロットは長年、代表的な庶民の娯楽として親しまれてきた。ここ数年は遊技人口が減少傾向にあるものの、業界団体によると、全国の店舗は1万以上に上り、売り上げが20兆円を超える巨大産業となっている。
業界団体の日本遊技関連事業協会のホームページによると、1996年の売り上げ(貸玉料)は約30兆円。遊技人口は2760万人に上っていた。店舗数も約1万8000店で、日本全国どこでも遊べる身近な娯楽となっていた。
しかし、ギャンブル性の高さが社会問題化すると、規制の強化で射幸性を下げるといったいたちごっこを繰り返す中で、2007年には約1万3000店となり、売り上げも約23兆円に減少した。
最初に当たる確率を低くし、1回当たると“連チャン”が続く「爆裂機」「MAX(マックス)タイプ」と呼ばれる機種で人気回復を狙う一方、ハイリスク・ハイリターンの特徴から、大勝ちを信じ大金をつぎ込む客が増加。新たな規制が必要との声も上がっていた。
こうした声に対し、業界は数年前から、手軽に安く遊べる「遊パチ」を推奨。通常1玉4円のところ、1円で借りて楽しめるパチンコも登場した。
あくまでパチンコは楽しむためのもの。勝手に負けておいて放火するなど言語道断で、一刻も早い犯人逮捕が待たれる。