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日本球界は大恐慌時代を乗り越えられるのか? 労組選手会の大罪(下)

 藤井のFA宣言で発覚した国内と海外のFA格差問題に止まらない。FA短縮を求めながら、今年の巨人・阿部、昨年の中日・岩瀬、荒木、井端、森野のようにFA宣言しないで長期契約する選手が続出している矛盾もある。権利を求めるのなら、実行しなければ本末転倒だろう。
一時期話し合い路線だった労組・選手会が二言目には、「法廷闘争も辞さず」という法廷闘争路線で暴走を始めたのは、実は古田元会長時代で、当時のNPB関係者はこう予告していた。「顧問弁護士の言うことをうのみにして行動すると、法廷闘争路線を突っ走ることになる。連中はもめればもめるほど儲かるし、自分の名前を売り出せるからね。軒先を貸して、母屋を乗っ取られる事態になるだろう」と。現実は予告通りに展開していると言える。「肖像権は球団にはなく、選手にある」という肖像権裁判は、選手会の敗訴に終わっているのに、懲りずに強硬路線を突っ走っている。

 古田元会長がヒーロー扱いされている、04年9月の史上初の選手会ストライキは、オリックスと近鉄の合併に端を発した球界再編、1リーグ制度の動きを阻止したと評価されている。NHKがストライキから5年後の今年、ドキュメンタリー番組で取り上げ、古田氏絶賛の内容になっている。が、その内情はといえば、世評と違って見切り発車、結果オーライのストライキ成功だ。NPB関係者がこう吐き捨てている。
「NHKの古田賛歌は一方的過ぎる。内容が偏向している」と。実際に5年前の選手会vsNPBの団交の場に居合わせた某球団関係者は、こう証言している。「会長の古田はストライキに関して完全に腰を引いていた。なんとか回避したいという意向が見え見えだった。が、球団合併の当事者だった近鉄の選手会長の礒部が断固ストライキを主張して、弁護士も後押しをして絶対に譲らなかった。いってみれば、見切り発車でのストライキ成功だった。涙の記者会見で一躍ヒーローになった古田だが、セ、パ6球団ずつの2リーグ制度存続に関しても、トンチンカンなことを言っていたのを忘れては困るよ。新規参入球団として、NPBが楽天を決めたときに、『ライブドアの方がよかった』と楽天の新規参入を手厳しく批判していたんだからね。古田の言っていた通りにホリエモン率いるライブドアを参入させていたらどうなっていたと思う。球団経営もパンクして、またぞろ球界再編の動きになっていただろう」。
 古田氏を選手会ストライキ成功のヒーロー扱いするのはとんでもない、歴史的な誤認だというのだ。それどころか、今、球界関係者の間ではこういう声が根強く聞かれる。「選手会のストライキが成功したことは、日本プロ野球にとって不幸だった。あのまま1リーグ制度になっていた方が良かったんだ。球界再編の千載一遇のチャンスだった。広大な米国ではメジャー30球団あってもいいだろうが、狭い日本では10球団1リーグ制度でちょうどよかったんだよ」。

 確かに難問山積している日本プロ野球界の現実を見ると、10球団1リーグ制度は理想的だったかもしれない。「現状のままのセ、パの2リーグ制度を存続させるようとするのならば、選手の年俸を半分にしないと難しい」。こう言い切ったのは、西武・堤義明オーナーと共に1リーグ制度移行に全力を傾注していたオリックス・宮内義彦オーナーの弁だが、核心を突いている。
 存続の危機に立ったJリーグが、実際に選手の年俸一律カットで窮地を脱している先例がある。が、選手会はのど元過ぎれば|で危機感が感じられない。ストライキの時には「球界改革のために選手会も血を流す」と公約したはずなのに、血を流すどころか権利の要求ばかりで、法廷闘争路線を走れば、ファンから背を向けられるばかりだ。
 「大リーグ選手会のように、経営者と対等な交渉ができるような選手会にしたい」というのが、労組・選手会の長年の悲願だが、最初から現実不可能だ。というのも、組織が根本的に違うからだ。大リーグの選手会には、マイナーリーグの選手は入会できない。メジャーに昇格してこそ初めて大リーグの選手になるわけで、マイナーリーグの選手は本当のプロ野球選手ではない。メジャーを目指す予備軍にすぎない。一般社会で言えば、見習い期間中のような存在に過ぎない。
 ところが、日本の選手会には、二軍の選手も入っている。「大リーグの選手会が本来の姿だろうが、日本の社会の場合、弱者救済という面があるから、二軍選手を切り捨てるわけにはいかない」。選手会関係者はこう語るが、それならば、大リーグの選手会を目標にするのは無理だ。日本球界とはかけ離れた高給取りのメジャー選手の集まりの大リーグ選手会だから、オーナーたちと対等な交渉ができ、労使協定を結べる。二軍の選手の待遇改善まで抱える日本の選手会は、日本流の独自の選手会を目指すしかないだろう。

 しかし、古田氏→宮本とやり手の続いた会長の後を受けた新井会長は、生真面目だが、口下手だし、交渉事には不向きなタイプで前途多難といえる。会長職が重荷になって肝心なプレーの方でも精彩を欠いている。「新井では無理ではないか」と周囲から不安視する声が噴出している。大恐慌の日本球界の元凶の一つが労組・日本プロ野球界選手会であることは間違いない。

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