A:脂肪肝は、肝臓に中性脂肪やコレステロールなどの脂質が過剰に蓄積した状態をいいます。原因としては肥満、多量の飲酒、糖尿病などがあります。
ご質問の方は、お酒が原因のアルコール性脂肪肝ではありません。食事も関係ないと思われます。
●ストレスが原因の脂肪肝
さほどお酒を飲まない非アルコール性脂肪肝の発症原因は、これまで不明とされていました。しかし、安保免疫理論で著名な安保徹・新潟大学大学院教授は、発症について「ストレスから身を守る反応」と説明しています。
環境温度の変化で体温も変わる「変温動物」では、脂肪は肝臓に溜めておけば問題ありません。しかし、人間のように、より進化した「恒温動物」では、肝臓ではなく、皮下脂肪と内臓脂肪を溜めて、体温を一定に保つようになりました。
一方、ストレス時は、ストレスホルモンが体内で作られるなど、大量のエネルギーを必要とします。その際、エネルギー確保のために皮下脂肪を溶かして血液に乗せ、肝臓に溜め込むという現象が起こります。
脂肪はエネルギー源としての効率が高く、肝臓に脂肪を蓄えることはエネルギー生成には好都合なのです。
●ライフスタイルの見直しを
つまり、ストレスが常態化すると、皮下脂肪はどんどん血液中に溶かされ高脂血症になり、さらに肝臓に脂肪が溜まり脂肪肝になるというわけです。
これは、変温動物から恒温動物に進化した過程と逆のプロセスをたどっていることになります。安保教授はこれを「先祖返り現象」と呼んでいます。
脂肪肝は、ストレスを乗り切るために生じている生命の適応現象と考えられます。つまり、脂肪肝があるということは「無理しているよ」「ストレスが溜まっている」という体からのメッセージでもあるといえます。
ご質問の方は多忙ですので、過労などのストレスが脂肪肝の原因になっているかもしれません。
これを機に、仕事量の調節やストレス対処法を実践し、ライフスタイルを改善することをお勧めします。そうすれば、あなたの脂肪肝は改善するでしょう。
首藤紳介氏(湯島清水坂クリニック医師)
薬だけに頼らない医療を実践。久留米大学病院小児科、大分こども病院、聖マリア病院母子総合医療センター等を経て、2010年より湯島清水坂クリニック(東京)に勤務。「福田−安保理論」を基盤にした自律神経免疫療法により「薬だけに頼らない医療」を実践中。