――最近、発達障害を取り上げる書籍や番組が増えていますが、“グレーゾーン”というのはどういうことなんでしょうか?
姫野 発達障害は「ここからが発達障害で、ここからが健常者」という線引きがありません。ですので、発達障害と診断がくだった場合でも特性は十人十色です。本書では、「傾向はあるが診断まではいかない」と言われたのに、仕事や日常生活に支障をきたしている人、障害の傾向を抱えながらもクローズ就労(会社に障害の傾向を隠している人)している人などを“グレーゾーン”と定義しています。
――「グレーゾーン限定の会」という集まりがあるそうですが、一体、どのような会なのですか?
姫野 グレーゾーンならではの生きづらさを抱えた人たちが集まる茶話会です。月1回開催されており、お茶をしながら悩みごとやその日のテーマに沿った話をします。グレーゾーンの人は周りに発達障害の傾向を隠している人が多く『ぐれ会!』のグランドルールの一つとして「○○さんがぐれ会!に参加してたよ」と口頭やSNSで発信するのを禁止しています。
――自分もグレーゾーンかもしれないと考えている人は多いと思います。何か対処する必要はありますか?
姫野 発達障害やグレーゾーンは、あくまで“できることとできないことの差が大きい障害”であり、それ以上でも、それ以下でもありません。
しかし、ストレスからうつ病や双極性障害などの二次障害を引き起こしている場合は、できるだけ早い受診をおすすめします。発達障害自体は先天性の脳の偏りなので治すことはできませんが、ちょっとした工夫で生きづらさを回避することは可能です。
――最近の企業では発達障害をどう捉えているのでしょうか?
姫野 発達障害について勉強している企業も多いと聞きます。これは自身も発達障害だということを告白した小島慶子さんがおっしゃっていたのですが、健常者と発達障害を二つに分けるのではなく、脳の多様性を認めると、会社としてもやりやすくなるそうです。これはすでにアメリカでは取り入れられており『ニューロ・ダイバーシティ』と呼ばれています。
発達障害の人はあくまで、凸凹障害なので、適材適所におくと、驚くべき能力を発揮する場合もあります。「空気を読む」「本音と建前をわきまえる」「根性論」などの日本特有の、昭和な体質の企業が減っていけば、発達障害傾向を抱える人でも働きやすくなるのではないかと思います。
(聞き手/程原ケン)
姫野桂(ひめの・けい)
フリーライター。1987年生まれ。宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。卒業後は一般企業に就職。25歳のときにライターに転身。現在は週刊誌やウェブなどで執筆中。