カナダ・ケベック州の上位裁判所(日本の高裁に相当)は先ごろ、JTの現地子会社『JTIマクドナルド』に対し、邦貨換算で約2000億円に及ぶ賠償金の支払いを命じた。7月26日までに142億円の支払いを求める仮処分も付いているという。JTは控訴し、仮執行の停止も求めている。
この訴訟はケベック州の住民約10万人が「喫煙で肺ガンや咽喉ガンなどを発症した」として、1998年にJT子会社を含む3社を相手取って集団提訴を起こしたもの。命じられた支払い総額は約1兆5000億円で、これはカナダの訴訟では過去最高額だ。
JTの分担比率は全体の13%強にとどまるが、もし最高裁で却下されれば、金満企業で知られるJTといえどもズシリと重い財政負担となる。
実はJT、この手の集団訴訟を世界で20件抱えており、うち18件がカナダでの案件。ケベック州での判決は、その第1号だった。言い換えるとJTには今後、天文学的な賠償金支払いリスクが付きまとう。
「控訴したとはいえ、もし世界の20件が一律2000億円の支払いで確定すれば、これだけで4兆円。健康意識の高まりから各国とも喫煙者が減少しており、その分収益も落ち込んでいる中で、賠償金の支払いが追い打ちをかける格好です」(証券アナリスト)
ムディーズやS&Pなどの格付け会社は、まだJTの格付けにネガティブな意見を出していないが、これで裁判所から第2弾、第3弾の賠償命令が出るようだと一気の格下げもあり得る。そんな事態になれば、さすがのJTの資金調達力にも大きく影響する。
「たばこ会社は今や目の敵にされている。今回の裁判に触発され、世界中で訴訟ラッシュの火の手が上がりかねません。大株主の財務省幹部は、JTの火だるま地獄を非常に恐れています」(経済記者)
財務省はJT株の3分の1を保有する筆頭株主。賠償ラッシュは、国家財産の損失と同義語なのだ。