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中国に異常にのめり込む UNIQLO柳井王国の野心と慢心

 中国と本気で心中する気なんじゃないか−−。
 ファーストリテイリング傘下の『ユニクロ』が9月30日、上海に同社としては世界最大の店舗をオープンしたことに、市場関係者が驚きを隠さない。尖閣問題を機に日中関係がギクシャクし、リスク回避策として“脱・中国”を加速させる企業が相次いでいる中、これに逆行するように中国傾斜が突出しているのだ。

 今回オープンした上海店は地下1階、地上5階で売り場面積6600平方メートルの旗艦店。これまで世界最大として昨年春に鳴り物入りでオープンした東京・銀座店(5000平方メートル)を大きく上回る。『ジーユー』など傘下4ブランドも合わせれば、総面積8000平方メートルと圧倒的な規模だ。
 ユニクロは2002年に中国へ進出して以来、既に約200店を出店しており、「2020年に売上高5兆円、海外3000店」のアドバルーンを掲げる柳井正会長兼社長は、中国だけで1000店を出店すると鼻息も荒い。
 とはいえ、中国では昨年9月に反日デモが暴徒化し、日系スーパーなどが襲撃された。表面的には沈静化したかに見えるが、尖閣沖で不測の事態が勃発すれば昨年の比では済みそうもない。
 そんな中国リスクを警戒して生産拠点を東南アジアへ移す企業が相次いでいる反面、ユニクロのように中国の消費市場が持つ経済的魅力に「リスクよりも金」として深入りした揚げ句、醜態をさらす企業もある。

 その好例が高島屋だ。同社は反日デモに大揺れした直後の昨年暮れ、中国での1号店となる「上海高島屋百貨」をオープンした。しかし冷え込んだ日中関係を背景に業績はパッとせず、当初は130億円と見込んだ初年度の売上高を4月には80億円に下方修正、社長に相当する総経理が辞任に追い込まれる事態に至った。
 さらには、つい先ごろ「50〜60億円」に再び下方修正する始末。市場には「この数字も怪しい限り。大赤字は必至で、投資マネー40億円の回収が見果てぬ夢に終わりかねない」との悲観的な観測さえ囁かれている。ユニクロと同じ上海が舞台だけに、柳井会長の耳に高島屋の惨状が届かないはずはない。
 「商品の8割を中国で作っていることもあって、柳井さんには新参者の高島屋とは違うとの強烈なプライドがある。だから『当社と高島屋を一緒にするな』と思っているでしょうが、中国人から見ればどちらも日本企業。襲撃の標的にする場合、ユニクロだけを外すとは思えません」(デパート関係者)

 実際、昨年の反日デモで上海のユニクロ店舗が標的になりかけた。そこでユニクロ側は「尖閣諸島は中国固有の領土」と中国語で書いた紙を張り出し、事なきを得た。地元警察の強い指示があったというが、このニュースが流れると会社に「もうユニクロ製品は買わない」「日本から出て行け」などの非難が殺到したという。しかし、その程度で“信念”を曲げる柳井会長ではなく、直後の記者会見で「生産拠点としての(中国への)見方も以前と変わっていない。日中は良好なパートナーであるべきだ」と強調、筋金入りの“親中国派”をアピールするのを忘れなかった。
 その後、他の日系企業にならってベトナム、カンボジア、バングラデシュなどに生産拠点を分散し始めたが、それでも「将来的に中国で3分の2生産」を唱え、依然として“中国命”の姿勢を崩していない。

 確かに13.5億人を擁する巨大市場は魅力だろう。しかし、なぜ「中国と心中」と陰口されるほど、彼の地の事業にのめり込むのか。
 「柳井さんは売上高5兆円という大目標を掲げている。近く発表する今年8月決算が1兆円余と予想されていることからも察しがつくように、大風呂敷であることは明らか。しかし、プライド高い彼が『単なる願望でした』などとは口が裂けても言えるはずがない。だからこそ少しでも目標に近づくためには、手段をウンヌンしている場合ではないということでしょう」(ユニクロ・ウオッチャー)

 同社は売上高の8割超を国内が占め、海外は2割弱にすぎない。国内市場が縮小する中、規模の拡大を目指すには海外、とりわけ生産拠点である中国での大躍進が鍵を握る。海外出店計画のうち、3分の1に当たる1000店を中国で目指しているのも確かにわかりやすい。だが、ウオッチャーは辛らつだ。
 「あの『尖閣は中国領土』の貼り紙からも見て取れるように、ユニクロは金儲けのためなら何でもする。だから中国で“金か安全か”を問われる事態に直面した場合、平気で社員を切り捨てるでしょう。その反発が一斉に起こったら目も当てられません」

 実力会長の野望達成のため、中国各地で働くユニクロ社員は、まさに命懸けである。

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