前回は当時の予算額約6300億円を、開始から1年半で使い切った。今回の第2弾は「昨年12月20日に閣議決定されたのに伴い、同日にさかのぼって対象期間に定めたことから、早ければ8月末から9月初めに終了する公算が大きい」(関係者)とされている。
「事前のアナウンス効果もあって経済産業省が新エコカー補助金の概要を発表した昨年の12月20日、全国のディーラーは新車登録者であふれかえった。ユーザーの大半は補助金復活が決まるまで登録を遅らせていたのです」(同)
前回は新車をエコカーに買い換えた場合、25万円が交付された。今回、確かに“妙味”は半減するが、それでも消費者には朗報だ。
ところがメーカー各社にとってのメリットは、この消費者の比ではない。だからこそ「業界が政治力を駆使して今回の復活を仕掛けた」と業界ウオッチャーは打ち明ける。
「前回はリーマンショックで世界経済が低迷したことから、国内景気刺激策として導入したのです。おかげで自動車業界は潤い、特にトヨタはプリウスの生産が追いつかないほど笑いが止まらなかった。ところが、補助金が打ち切りになった途端に新車販売はガクッと落ち込んだ。そこで震災からの復活と円高対策を錦の御旗に掲げ、労使一体となって政府に働きかけた末に実現したのが3000億円の予算確保です」
むろん、その金は血税から出ている。前回分と合わせれば実に1兆円近い自動車業界へのカンフル注入だ。
これで自動車メーカーがハッピーとなり、回りまわって国民全体がハッピーになれば申し分ないが、現実はそう甘くない。業界団体である日本自動車工業会の志賀俊之会長(日産自動車最高執行責任者)は3月の定例会見で「日本経済の減速を避けるには円高の緩和が必要」と前置きし、補助金打ち切り後の懸念にこう言及した。
「エコカー補助金がなくなったときに依然として円高が続いているのが最悪のシナリオ。国内販売が落ち込み、輸出が増えなければ自動車業界が日本経済全体に迷惑をかけることになるかも知れない」
繰り返せば復活したエコカー補助金は、早ければ8月末から9月初めには打ち切りになりそうだ。そのとき依然として1ドル80円台の円高が続けば、輸出採算が悪化し、自動車業界が日本経済の足を引っ張りかねない、と志賀会長は憂いたのである。
円安が急ピッチで進んでいるのであればともかく、現在とほぼ同水準で推移していれば、自動車産業が日本経済のお荷物と化し、「何のためのエコカー補助金だったのか」が問われてくる。