ドラマは武富健治のコミックが原作。平凡な教師がどこでも起こり得る問題について過剰に悩みつつ、独自の教育理論によって解決していく様子を描いた作品である。
テレ東が、'11年4月から6月にかけて毎週夜10時から1時間枠で放送した。だが、平均2.06%と期待された数字はとれなかった。
それなのに、なぜいま『鈴木先生』の映画が注目なのか。
それは、テレビが製作する、佳作映画の興行的実験材料になっているからだろう。つまり低視聴率のドラマでも、ファンの“食いつき”がよければ映画化し、当てていくというもの。
背景にはテレ東が製作・配給した映画『モテキ』のヒットがある。同作はドラマとして'10年7月から9月まで放送された時は平均3.5%だったが、'11年9月に映画化されると興収22億円(製作原価推定7億円)を稼いだのである。
テレビ局が作る映画は、一部を除き弱体化したといわれる。テレビ局がCM同然のように宣伝しヒットさせる手法は、かえって視聴者の反発もあり難しい状況が続いている。かつては放送外収入の柱だった映画だが、今やもっとも売りづらい“商品”になってきた。
このテレ東の新戦略に他局は注目したのだ。
編成局内でも『モテキ』に続き『鈴木先生』の映画化へ突き動かした要因がいくつかあった。
一つは作品内容の高評価である。『鈴木先生』は日本民間放送連盟賞のテレビドラマ番組部門最優秀賞受賞している。
さらに再放送などのリクエストもかなり多く、実際、DVDでは好セールスを記録した。本来、深夜ドラマのDVDなら5000本売れればヒットに入るが、『鈴木先生』はそれに近い売れ行きなのである。
この“現象”にビジネスチャンスありとみた他局は、さっそく同様の戦略を打ち出した。
最近では、TBSが4〜6月クールで放送した『コドモ警察』を映画化することを決めた。
内容的に佳作とされる映画化の興行成績は、放送外収入減で苦しむテレビ界のカンフル剤になると関係者は固唾を呑んで見守っている。