正式な大会理念は「平和に貢献する 世界を結ぶオリンピック・パラリンピック」。石原知事は「我が国は世界で唯一、第2次大戦ののち60年一貫して平和を築いてきた。その日本で五輪を開催することは世界平和への大きな貢献になる」と反戦国ニッポンを誇った。
“タカ派”政治家として知られる知事の口から「平和」という言葉がポンポン飛び出した。
「世界に紛争は絶えないが、幸い私たちの国は、憲法という理念だけではなく、地政学的な条件も含めて敗戦以来、今日まで大小問わず危機にさらされることなしにきた。世界の他の地域で起こっている物事を眺めると、私たちの努力が正しかったという気がする。胸を張って、オリンピックの舞台を通じて世界に平和を呼びかけることができる」などと訴えた。
招致計画の柱はこれまで、各競技施設のほとんどを半径8km圏内に収めたコンパクトさと、最先端環境技術を駆使した地球にやさしい五輪などが売りだった。そのトップに「平和貢献」をドンと据えたかたちだ。
とかく好戦的な言動が目立つ知事。それゆえ直後の定例会見では、記者団から「理念の『平和』は新鮮だったが…」との質問が飛び出した。
知事は「新鮮でもないよ。平和なんてさんざん言いつくされた言葉だけども、しかし世界を眺めればあんまり実現はされてませんわな。だからこそ改めて使った。言うにやさしいけど、なかなか実現するのは難しいことだよ。平和ってのはね」とさらり。まるでハト派のようだった。
ならば、現行憲法を評価しているかというと「いや、そうじゃない」。
改憲論者の知事は「日本の平和をもっと確かなものにするために、いまの憲法は変えたほうがいいと思っている。ただ、その憲法の効果もあって平和でこれた。そりゃやっぱり歴史の事実としてたいしたもんだと思いますよ」と話した。(渡辺高嗣)