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「まれにみる悪逆非道な犯行」と言われた事件も 判決が物議を醸した無期懲役裁判3選

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 2019年は凶悪犯罪の裁判が多数行われ、その判決が何かと物議を醸した。特に世間を驚かせ、死刑が妥当と言われた裁判で「無期懲役」判決が下され、世間の声を司法が汲んでいないと批判が挙がった。

 そこで今回は、2019年に物議を醸した「無期懲役」判決について振り返ってみたい。

・熊谷6人殺傷事件

 2015年、埼玉県熊谷市でペルー国籍の男が、住宅街に侵入し小学生2人を含む6人を殺害。凶悪事件として驚きが広がり、被告は死刑になるものと思われた。

 1審の裁判員裁判では、弁護側が被告には責任能力がなく心神喪失状態だったとして無罪を主張。しかし、裁判長は金を奪う目的で6人を殺害した上、証拠隠滅を図るような行動をしていることから、死刑判決を下した。

 ところが、2019年12月5日の控訴審では、被告が事件当時心神耗弱状態だったとして、「命を奪われた結果は重大で、責任能力の点を除けば、極刑をもって臨むしかないが、法律上の減軽をすることになる」と裁判員裁判を覆し、無期懲役とした。

 この判決に、遺族は「家族をなくしたことのない人間が法律だけで裁く世の中でいいのか」と憤る。ネットの反応も「統合失調症なら人を6人殺しても死刑にならないのか」「法律論だけで減刑していいのか」と怒りの声が上がった。

・新潟女児殺害事件

 2018年、新潟県の路上で小学2年生の女児を誘拐し、わいせつ行為をしたうえ、殺害し、遺体をJR越後線の線路に載せ損壊するという非道極まりない事件が発生した。

 この事件で逮捕された男(25)は、裁判で傷害致死罪を主張。一方、検察側は死後硬直した女児を温めて性行為に及ぶなど、非道の限りを尽くしていることから「まれにみる悪逆非道な犯行」として死刑を求刑する。

 12月4日、新潟地裁は無期懲役の判決を下す。わいせつ、暴行、線路の上に死体を置き損壊するという極悪非道な行動を取ったとしても、法律論で「1人のみ殺害している」として無期懲役としたことに、世間からは異論が相次いだ。

 なお、この判決については、検察・被告側とも不服として控訴している。

・新幹線殺人事件

 2018年、東海道新幹線の車内で男女3人を死傷させた男(23)の裁判で12月18日、横浜地方裁判所小田原支部は無期懲役を言い渡した。

 この事件では、被告が「刑務所に入りたい」と事件を起こした上、逮捕後も反省の意思を示さず、「3人殺したら死刑だから2人にしておいた」などと話し、極刑に処すべきではないかとの声が挙がっていた。

 しかし、ここでも司法は「被告に前科がないこと」などを根拠に無期懲役とした。

 3つの事件は凶悪犯罪でありながら、精神障害や「殺した数」で刑罰を判断しており、「遺族感情の汲み上げや犯罪抑止に繋がっていないのではないか」との指摘がある。一方で、法曹関係者からは「司法は感情に囚われず法律に則って決められるものだ」と說明する。

 いずれにしても凶悪事件が多発する中で、抑止になっていない感もある刑法。その在り方について、考える時が来ているのかもしれない。

文 櫻井哲夫

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