実力は一番。それを証明するため、アドマイヤオーラの陣営は非情の決断に踏み切った。
ダービー4勝、だれよりもダービーの勝ち方を知るはずの武豊を鞍上から下ろした。代わりに白羽の矢を立てたのは、リーディング争いで独走態勢に入りつつあるニューリーダー岩田だった。
「彼が乗ったシンザン記念、あれがこれまでで一番いいレース運びだった。そのときのいいイメージがあるはず」と松田博師は口を開いた。
中団から上がり3F33秒3の末脚がさく裂。桜花賞馬ダイワスカーレットを難なく封じ込んだ。
しかし、続く弥生賞も連勝して1番人気で挑んだ皐月賞は武豊が乗り、4着と不完全燃焼に終わった。時すでに遅し。小回り中山で、ヴィクトリーが逃げ切る前残りを最後方から追い上げても間に合うはずもなかった。
「前が詰まりっぱなし。他馬によられるロスも大きかった。それでも最速上がりをマークしたように悲観する内容ではないんだけどね」と師は振り返った。
アドマイヤの冠にとって、ここ数年のダービーは悔しさが募る舞台だ。一昨年、オーラの兄ジャパンは10着。昨年はメインが2着、ムーンは7着に終わっている。99年のアドマイヤベガ以来、2度目のダービー制覇はまさに悲願。蜜月だった日本一のジョッキーを降板させる前代未聞の乗りかわりは最善を尽くした結果だったようだ。
馬もうなっている。今朝(23日)はDWコースで終い重点。6Fの時計こそ平凡だが、ラスト1Fはさすがと思わせる切れ味を発揮し、併走馬を馬なりのまま1秒5ちぎって見せた。柔らかく、シャープな馬体はさらに研ぎ澄まされている。
「デキは皐月賞よりいいし、万全に持っていけるでしょう。切れすぎるので距離がどうかとも思うけど、同世代同士なら」
師自身も昨年のダービーはドリームパスポートで3着と惜敗している。捲土重来。勝利至上主義を身にまとったオーラが、末脚を爆発させる。