「初戦突破」を果たしたのは、昨年までで39校中12校。勝率に直すと3割程度しかないが、08年、成章(愛知)で背番号1を背負った小川泰弘(現東京ヤクルト)が駒大岩見沢(北海道)に投げ勝っている。本来の選考基準は「野球以外の活動でも評価」となっているが、のちにプロで活躍した投手が“野球無名校”に埋もれていたとなれば、意義深さも感じる。
今大会の地区選出だが、モメたところもないわけではない。近畿地区は5校目まではスンナリ決まったが、6校目で意見が割れた。昨秋の近畿大会4強の大阪桐蔭(大阪)、滋賀学園(滋賀)、龍谷大平安(京都)、明石商(兵庫)は確実、5校目は同大会ベスト8で奈良県大会を1位で突破した智弁学園(奈良)が選ばれるまでは良かった。天秤に掛けられたのは報徳学園(兵庫)と市和歌山(和歌山)の2校。報徳学園はベスト4進出を懸けて滋賀学園と戦ったが、延長14回の末、「0対1」で惜敗。同じベスト4進出を懸けた明石商と市和歌山の試合だが、こちらは「7対0」で明石商がコールド勝ちしている。この敗れた市和歌山と報徳学園のどちらを選ぶかで難航した。最終的には『地域性』で決定した。先に決まった5校中、紀伊半島の高校は智弁学園のみ。バランスを取るように、大阪圏の報徳学園ではなく、市和歌山が選ばれた。
一方、東北地区だが、青森県の青森山田と八戸学園光星が選ばれている。東北大会の決勝戦は青森山田と八戸学園光星で争われた。選考段階では同大会ベスト4の盛岡大付校(岩手)、ベスト8ながら仙台育英(宮城)も残っていた。「青森山田対仙台育英」の準々決勝は4対3で青森山田、決勝戦・青森山田対八戸学園光星は5対0で青森山田が勝利。地区優勝の青森山田と接戦を演じたのは仙台育英のほうだ。しかし、八戸学園光星は準決勝(対一関学園)、準々決勝(対東陵)を完封勝利しており、『地域性』よりも『勝敗』『成績』で選ばれた。
選考委員会の決定に意義を唱える関係者、メディアはいなかった。この点は強調しておきたい。だが、「勝利校=甲子園」ではない以上、出場校は惜しくも選ばれなかったライバル校のためにも善戦しなければならない。その気持ちは21世紀枠で選ばれた高校も同じだろう。
21世紀枠に選ばれ、その年の夏の甲子園に帰って来た高校は、宜野座(01年沖縄)と山形中央(10年山形)の2校のみ。大会2日目(3月21日)、21世紀枠同士の対戦となり、釜石(岩手)が小豆島(香川)に競り勝った。21世紀枠同士の試合は13年の「遠軽対いわき海星」以来、2度目。21世紀枠で出場した高校の最高成績は宜野座(01年沖縄)と利府(09年宮城)のベスト4。2勝以上を上げた学校もこの2校だけ。釜石の2回戦以降にも期待したい。(スポーツライター・美山和也)