個人的に大好きな菊花賞は、史上まれにみる“乱菊絵巻”が繰り広げられそうだ。競馬記者として腕の見せどころになるが、モチベーションは例年以上に高く、熱い。先週の秋華賞で単勝と馬連を仕留め、軍資金は財布に収まりきらないほど潤沢だからだ。
もっとも、その意気込みと結果が必ずしも結び付かないのが奥深き馬券道。こういうときこそ、地に足をつけたセオリー予想で勝負する。
本命はズバリ、イコピコ。TRの神戸新聞杯でリーチザクラウン、アンライバルド、セイウンワンダーなどの実力馬をひとのみ、わずか2分24秒2で春の勢力分布図を塗り替えてみせた。
父は菊花賞馬マンハッタンカフェながら、母系には短中距離型のジェイドロバリー。「そこが気になる」という声も聞かれるが、西園調教師は「マチカネフクキタルのときも血統的に不安視されたけど、上がり(3F)33秒9の末脚で差し切り。日本の長距離戦はスローの上がり勝負。折り合いが何より重要なんだ」。技術調教師として自ら攻め馬に乗り、菊花賞を射止めた成功体験を踏まえ、不安を一蹴した。
「持ち乗りが乗っていても掛かったことがないし、前走でも3コーナーでハミを掛けた瞬間にアンライバルドが行く手をさえぎっても、そこからハミを掛け直したほど。普通の馬ではあんなことはできない。体重は同じでも、春とは筋肉の付き方が違うし、トモにも実が入った。過去、どれだけの名馬が、淀の3コーナーの坂で折り合いを欠いて失速したか。菊花賞は折り合い、そしてすごい瞬発力が一番の武器になる」と豪語した。
史上まれにみる混戦だからこそ、「ゆっくり登ってゆっくり下る」という淀の3000メートル克服の極意が何よりも重要。その攻略法にジャストフィットするイコピコが、菊の大輪を咲かせる。