ヒバゴン騒動の発端は1970年7月20日であり、広島県比婆郡(現・庄原市、以下同)西城町油木地区で初めて目撃されている。山でキノコ狩り中の小学生によって、熊笹を掻き分け出現したヒバゴンが確認されたのだ。その後、多数の目撃者を出している。1974年には、ヒバゴンと思しき生物が写真撮影された。この写真を鑑定した動物学者たちは、ニホンザルかツキノワグマだろうとしている。勿論、この写真そのものが、ヒバゴンを写したものではないという意見もある。
ヒバゴンについての物証は少ない。足跡のサイズは縦21cm、幅22cmで、体長は1.5mから1,7m程度。ヒバゴンのものと思われる足跡や体毛が採取されているが、残念ながら正体の特定には到っていない。
一応、仮説では巨大クマ説が有力だが、動物園やサーカスから逃走したチンパンジー説、巨大化した日本猿説も根強い。筆者・山口敏太郎の仮説では、戦争中に山中に遺棄された類人猿の生き残りだとしている。
また、ヒバゴンが出演した広島県比婆郡近辺には獣人系の妖怪の伝説も存在している。
比婆郡東城町に出た妖怪とされる藍婆がそれだ。鬼の一種や山姥とも言われているが、姿に関する詳細が伝わっていないため、正体は不明である。出現した場所は比婆山と近く、ヒバゴンとの関連が指摘されている。藍婆は日頃、猪、鹿、狼を食べていたが、時々木こりや女など人間をさらって、石臼ですりつぶし、貪ったとされている。後に覚隠という僧侶が山に入り、藍婆を教化したことで人に対する害が減ったそうだ。
ヒバゴンはここ20年近く目撃例が無いが、町おこしに利用されている。1970年からは「ヒバゴン郷どえりゃあ祭」というヒバゴン関連のイベントが開催されている。土産物には「ヒバゴン饅頭」などがある。地元の食事処「やまびこ」では、なんと「ヒバゴン丼」を扱っている。
他にも、広島ではゆるキャラの一つのように考えられている向きもあるため、ヒバゴンは昔から現代に至るまで地元の人々に愛されているキャラクターといえるのかもしれない。
監修:山口敏太郎