発端は2006年、ある女性が眠っている時に起きた。この女性は寝ている時、夢の中で何度も一人の男を見るようになった。彼女は、実際にはこの顔の男にはまったく会ったことがなかった。ところが、彼女はたびたび夢でこの男と会い、男は人生のアドバイスまでしてきたという。そして彼女は、この男の顔をはっきりと描くことができたのでスケッチしたのだ。
彼女がその男の顔をスケッチし、担当の精神分析医に見せたところから事態は思わぬ方向に向かうことになった。
精神分析医が、彼女が描いた男の顔の絵を机の上に置いたままにしていたところ、別の患者が「この男性は、私の夢によく出てくる男だ!」と言ったのだ。この意外な事実に驚いた分析医は同僚の医師に相談、再発夢の症状を持つすべての患者に、この男のスケッチを見せることに。その結果、数カ月以内に4人の患者が、夢の中でこの男を頻繁に見ると断言したのだ。ある患者のケースは、仕事でストレスが溜まっているときに、大型スーパーで迷子になる夢を見た。どうしたらいいのかと困っていると、この男が出てきて道を教えてくれたという。
さらに、この男の絵が「thisman.org」で紹介されると、2週間でアクセス数がトップクラスになり、しかも世界中から、自分も夢の中でこの男を見たという情報がよせられたという。その数は数千人で、少なくとも2000人が夢の中でこの男を見たというのだ。情報を寄せた人の住んでいる地域もニューヨーク、ロサンゼルス、ベルリン、サンパウロ、テヘラン、ローマ、バルセロナ、ストックホルム、パリ、ニューデリー、北京などまさに世界的規模だ。さらに、世界中で電柱や壁、公園の木などにこの男の顔が張られる出来事もあった。
かつて私がこのコーナーで紹介した謎の力士シールと似たような様相を呈している。
日本では11月はじめ、ニッポン放送「高嶋ひでたけの特ダネラジオ〜夕焼けホットライン〜」でも取り上げられたので、聴いた方もいるのではないだろうか。(今も同社HP内の同番組コンテンツで、この男の絵がアップされている)
一部では、大手企業によりメンタルコントロールシステムが開発され、同じような夢を見る人が増えたのではとの指摘がある。その一方、手のこんだ作り話だとの批判もある。
世界中の人々の夢に現れ、アドバイスをくれる男。イタズラなのか、本当なのか、少しばかり「夢」のある話ではある。
(イラスト=夢の中の男(thisman.orgより))