今は昔の話だが、新馬を勝つと厩舎関係者は赤飯を炊いて祝ったという。新馬を勝つことは、それぐらい価値が高かった。
新潟2歳Sに出走するエフティマイアはその新馬戦を直線2番手から抜け出し、0秒8差の圧勝劇を飾った。さらに、返す刀でマリーゴールド賞を連勝、エリート街道をバク進中だ。
マリーゴールド賞も好位3番手から抜け出し、1馬身半差の完勝。矢野進師は、「(2戦とも)若駒離れした古馬のようなレースだった」と最大級の賛辞を与える。
牝馬は暑さに強いというのが定説だが、記録的な猛暑もなんのその、とにかく元気いっぱい。馬インフルエンザ騒動もどこ吹く風だ。「ケイコは一日も休んでいない」と師は笑顔で話す。
1週前(23日)追い切りはWコースで意欲的に3頭併せを敢行。終始、活気のある動きで、5F68秒7→51秒9→38秒1→13秒3(馬なり=併入)をマーク。いまや遅しとゲートを待ちかねている。
「来週はもう強いとこはやらなくていい。息を整えるだけ」1200m、1400mと距離も無難に克服してきた。抜群のセンスの持ち主だけに、1600mが死角になることは考えられない。
「北海道から強い馬が移動してくるから楽観はできない」トレーナーがそう言ってカブトの緒を締めるのは、勝利を意識している証拠でもある。
ともあれ、新潟2歳チャンピオンの最短距離に立っていることだけは間違いない。
「新馬を勝った後、すぐ2歳Sを使いましょうと、ユタカ君が言ってくれた。数ある乗り馬の中から選んだくれたわけだから、能力を買ってくれている証拠でしょう」と領家師はうなずいた。
コウユーココロが武豊騎手をそこまで心酔させたのは新馬戦だった。抜群のスタートセンスでハナを奪うとおいでおいでの楽勝。時計は芝1000mで58秒6と平凡だが、当日は雨が降る重馬場。「追ってグッと沈む」と師が評価する力強い走りは、道悪にもまったく乱れなかった。
その後はここに照準を絞り、短期放牧へ。「使う前からソエが出かかっていたし、レース後、少しモヤッとしたから大事を取った」充電完了後は栗東の坂路で素晴らしい動きを連発している。22日の1週前追い切りは800mを53秒9→38秒0→24秒2→12秒1。ラスト2Fの瞬発力は文句なしだった。
「1週前に目いっぱいできたから、あとはさっとやるだけでいい。反応、フットワークともに良くなっている」
毎年、激しいレースになる小倉2歳Sは一本調子な逃げだけでは勝てない。しかし、領家師は「姉(コウユーキズナ)が後ろから行く馬だったし、この馬のセンスなら差す競馬もできるはず」と自信をのぞかせた。
そして鞍上は天才・武豊。これ以上頼もしいパートナーはいない。あとはその手綱さばきに身を任せるだけでいい。