琴光喜は解雇された後も復帰を熱望。昨年9月に力士としての地位保全を求めた仮処分を東京地裁に申請したが、12月に却下されていた。
支援者は「琴光喜関を救う会」を結成し、昨年11月に約5万8000人の署名が添えられた嘆願書を、協会側に手渡していたが、協会は復帰を認めない方針を示していた。
残る手段は裁判のみ。琴光喜はこれに、最後の望みを懸ける。琴光喜側の主張は、他の関与力士との処分の差。野球賭博にかかわった大方の力士は、わずか1場所の謹慎で復帰している。最たる例は先場所、平幕ながら、14勝1敗で横綱・白鵬と優勝決定戦を争った豊ノ島。
琴光喜が解雇処分となった理由は、協会からの最初の聞き取り調査で疑惑を否定した点と常習性とされた。だが、“トカゲのしっぽ切り”という印象もぬぐえず、琴光喜の主張も分からぬではないのだ。
不祥事続きだった10年が幕を閉じ、今年はクリーンなイメージで信用を取り戻したい協会としては、もう琴光喜にかかわりたくないのがホンネだろう。
くしくも、琴光喜が協会を提訴する意向が明らかになった11日、初場所3日目の両国国技館は、5118枚もチケットが売れ残る不入り。これは、国技館が蔵前から両国に移った85年1月初場所以降でワースト記録。白鵬を脅かす日本人のライバル不在が、不人気の要因でもある。琴光喜が復帰すれば、それも解消できるのだから、なんとも皮肉だ。
協会VS琴光喜、バトルはついに法廷に持ち込まれる。
(ジャーナリスト/落合一郎)