「マー君(田中将大=21)も藪の話に興味津々というか、他投手の質問への回答でも頷きながら聞いていますよ」(メディア陣の1人)
藪が質問攻めにされていることとは−−。それは、「メジャーでの流転生活」についてである。ストライクゾーンの違い、日本とは比較にならない長距離移動の辛さ、調整方法、契約球団が見つからない年の過ごし方や対応など…。楽天にはメジャーからの帰還者・福盛和男投手(34)もいる。09年のチーム再合流のころ、やはり、メジャー生活に関する質問を受けたが、今回ほどの盛り上がりは見せていない。
「福盛は元チームメイトなので、改まって聞くということにはならなかっただけ」(前出・同)
藪の加入で、楽天控室が“メジャー・ブーム”になった理由はそれだけではなさそうだ。
大黒柱の岩隈は順調に行けば、来年オフに海外FA権を取得する。また、田中もWBCを経験。ダレル・ラズナー(29)、フアン・モリーヨ(26)といった元メジャー投手もいる。福盛帰還時と比べ、メジャーがより身近になっており、ラズナーとごく当たり前のように英語で会話する藪の姿にも衝撃を受けたからだろう。
「岩隈にはメジャーに挑戦するという噂もありますからね。時期が時期だけに、藪を質問攻めにしたとなれば…」(前出・同)
その影響だろうか。24日の日本ハム戦に先発した岩隈は、完投に固執せず、終盤のマウンドをリリーフ陣に託した。7回表、日本ハム・中田翔に左翼フェンス直撃弾を浴び、『完封』がなくなると、8回1失点で降板。リリーフの小山伸一郎を労い、満足そうな笑みを浮かべていた。前任者・野村克也氏の時代、完投しようとしない岩隈の姿勢に苦言が呈されたことが何度もあった。この日の好投も、おそらく野村監督だったら、「完投しようともせず…」と、ボヤキの材料にされていたはずだ。
「マーティ・ブラウン現監督は『肩は消耗品』なる“メジャー式の考え”の持ち主です。どちらが正しいのかは誰も分かりませんが、『投手分業制』が確立されている現体制の方を、岩隈は好んでいます」(関係者)
そういえば、藪は阪神時代に『野村野球』を体験している。それが礎となり、星野政権下でチーム再建が果たされたものの、野村監督の教えを受け入れられず、成績不振に陥ったり、新天地を求めて行った選手も少なくない。楽天ナインは野村監督には感謝しているが、時計が逆戻りすることは誰も望んでいない。楽天首脳陣が岩隈たちの質問攻めを容認しているのは、メジャー以外の話題がないからだろうか。