正味の話、マトモでいられるのは月の半分もないのではないか?そんな疑問が湧いてくる「メス」という生き物。キャバクラ嬢もちろんメス。その上、気分で生きているようなところがあるので、気の弱い大人しい性質であれば、客側の方が女の子の顔色を窺がってビクビクしてしまうことだってある。
「そんな月の半分もマトモじゃないなんてことないですよ。人にもよります。生理前も生理中も全然変わらない子も大勢いるし…みんな普通の生活を営めるから大丈夫です」
やんわり反論してくれたのは、上野のキャバクラ『Q』の遥香さん(仮名・28歳)。 しかし、この反論、全ては「私にくらべればみんなマシ」という観点から導き出されている様子。
「そうそう、私に比べればみんなマシです。私なんて生理の2週間前かメンタルがオカシクなって、生理になったらなったでもう地獄の苦しみですから…そんなもんに比べたら、機嫌が悪いなんてあまいあまい」
なぜかちょっぴり自慢げ。だいたいにして生理痛が酷すぎて、寝込む有様。顔色も真っ青でたとえお店に引っ張って来られようとも到底、接客できる状態ではない。
「特に酷くなったのは、25歳を過ぎてから。婦人科もたまに行くんですが、特に問題もなくて…もう体質としか言いようがないんだそうです」
しかし、生理痛なんてのは痛いだけで何とかなると、遥香さんは言う。それより持て余すのが、2週間前から始まるメンタルな不調だ。
「鬱病みたいな感じかな。憂鬱で憂鬱でたまんない。何を見ても、何をしてても後ろ向きで悲観的な見方しかできなくなって、もう絶望的な気分になっちゃう」
例えば、出勤途中に犬の散歩をする老人がいたとする。普通ならば、犬を見て可愛いなあと思う程度のことだが、
「あのおじいさんは独居老人かかもしれない。あの犬、今は散歩もできるけど、おじいさんが寝たきりになったら?まして弱ってしまったら? 保健所行き?」
こんな風に悪い方へ悪い方へと思考は傾くばかり。それはそれで大変そうだが、これを店でやられる客はもっと大変なのでは?
「私もそう思います。一応私のお客さんには、生理前は本当にどうかしちゃうからって、言ってはあるんですけど。でも、出勤確認の電話やメールで“今日って生理前?”なんて聞かれると、よっぽど怯えられてるっていうか、困るんだろうなあとは思いますよ」
それもそのはず。バランスを崩している時の遥香さんときたら、客のカラオケを聴いては遠い昔を思い出して涙をこぼす。グラスを倒しては、
「こんなことすら満足にできない自分なんて…」
と涙をこぼす。挙句は客に見せられた子供の笑顔の写真を見ても、
「ああお父さんいソックリ…あと30年も経てば薄毛の人生が待ってるんだ…」
と子供の将来を勝手に憂いて涙をこぼす。何だか分からないが落ち込んだり、泣いたりする彼女に客はアタフタするばかり。疲れるに決まっている。
「最終的には明日死のう、明日死のう、ですよ。まあ結局そんなことしないんですけど…」
こんなに患っていては商売上がったりだ。生理痛がひどい友人がピルを飲んでいることを聞き、自分も試してみた。
「ここ半年くらい飲んでるんですけど。もう人生で一番調子いいです。もっと早く飲んでいれば良かった。それにホラ、ピルってホルモンバランスを妊娠状態と同じにしちゃう薬なわけだから、胸がBカップからDカップになっちゃって。思わぬ副産物!」
しかし、ピルの副産物は胸だけではなく他にも。ピルを飲むとどうしても太りやすくなってしまう。そのバスト、1カップ分は贅肉と見たが…。