実際、8月13日から都内で開かれるイベント「東京タピオカランド」の前売りチケットは1日で完売するほどだ。そのため、いまだに新規出店も相次いでいる。
タピオカブームは、今年2月の東京税関が公表したタピオカ輸入量でも明らかだ。2018年のタピオカ輸入量は対前年比142・6%の2928トンと、大幅に増加している。タピオカは00年代半ば頃から’17年まで、1500〜2000トンで推移していたが、それが2018年は一気に増えている。
そもそもタピオカとは、どういった食材なのか。
「タピオカの原料は、キャッサバという中南米原産の多年生植物で、このキャッサバを加工し、6〜10ミリの球状にしたものがタピオカとなる。モチモチとした独特の質感で、それを80年代に、ミルクティーなどに混ぜタピオカドリンクを作り上げたのが台湾です。以来、台湾の国民的飲み物となり、そこから世界各地に拡大したのです」(栄養管理士)
実は、タピオカドリンクは過去に2度、日本でブームが起きていて、今回で3度目のブームになる。
「第1次ブームは1992年頃で、甘いココナッツミルクに、タピオカパールと呼ばれる白い小さな粒を入れた『タピオカココナッツミルク』と呼ばれるドリンクが流行りました。第2次ブームは2008年に、黒くて大きいタピオカが入ったタピオカミルクティーが流行りました。一度ブームは沈静化しましたが、このタピオカミルクティーが再注目されているのが、今回の第3次ブームなのです」(飲食業界専門の経営コンサルタント)
なぜ、過去に流行ったタピオカミルクティーが、ここにきて再ブームになっているのか。フードアナリストは、その理由をこう分析する。
「ひとつは台湾ブームです。2011年に発生した東日本大震災の際、250億円という破格の義援金を寄せてくれた台湾に日本人の好感度はいっきに高まった。それを機に日本で台湾旅行がブームとなり、それがきっかけでタピオカも再注目されたのです」
実際、第3次ブームに火をつけたのは、台湾の人気店でもある。
「2013年に代官山に出店した『春水堂』を皮切りに、2015年には『ゴンチャ』、2017年に『THE ALLEY』など、台湾人気店が続々東京に進出し、徐々に人気を集めていました」(同)
さらにSNSの普及がタピオカブームに拍車をかける。
「ミルクティーだけでなく、様々なタピオカドリンクを作る店も出てきました。ゼリーやフルーツ、チョコレートなど、トッピングも増えてカラフルになり、インスタ映えもしやすくなった。流行に敏感な女性がSNSに投稿したことで、爆発的に認知度が高まったのです」(同)
しかし、ブームの影では、タピオカドリンクのプラスチック容器が路上に捨てられ、問題になっている。
「今やプラスチックゴミ問題は、今年の6月に大阪で開催されたG20大阪サミットでも喫緊の課題として取り上げられました。年間800万トン、ジャンボジェット機5万機分のプラスチックゴミを減らさないと、長い目では生態系が破壊され、生物が絶滅危機になる。そこで各国は続々と対策を急ぐ。タピオカ発祥の台湾でも、プラスチックのストロー禁止の動きが出てきています」(大手新聞社の社会部記者)
社会問題として大きく取り上げられたことで、タピオカドリンクにマイナスイメージが付き、倦厭する人も増加しているという。タピオカドリンクに関する問題は、これだけではない。
「タピオカドリンクは原価率が低いため当たれば儲け幅が大きく、第3次ブームで儲けた『タピオカ長者』も出現しています。さらにはスーパーなどでもタピオカは売れに売れ“令和の黒いダイヤ”とまで称する声もあり、『このチャンスを逃すまい』と、販売業者が雨後のタケノコのごとく出現していて、中には低品質のタピオカドリンクを販売する業者も現れ始めています」(前出・飲食業界専門の経営コンサルタント)
悪徳業者が増えたことで、ブームが一気に沈静化する可能性も高まっている。
「すでに流行に敏感な女性たちは“タピオカは古い”と思っています。最近は、ウーロン茶、台湾茶、紅茶などのお茶の上にフワフワのチーズクリームと岩塩をトッピングした“チーズティー”が密かに流行り始めています」(大手広告代理店関係者)
流行に敏感な女性たちは飽きるのも早い。乱立したタピオカドリンク店の閉店が相次ぐ可能性は、大いにありそうだ。