空気で分かる。レジネッタが漂わせている気配が、牝馬2冠へのシグナルだ。
「ビッシリ追えば気持ちがピリッとしてくるタイプ。その点、前走はおとなしすぎた。カッカしている方が爆発するし、そういう気配がこの馬本来のもの。桜花賞に似ている」
担当の藤原助手は満足そうにうなずいた。そのかたわらで磨き上げられた鹿毛の馬体が、近寄りがたいオーラを発している。
スイッチが入ったのは12日の追い切りだった。栗東坂路で800メートル53秒2→39秒4→13秒8のタイムをマークした。馬場が荒れていたため、時計自体は平凡だが、大切なのはその中身だ。
「目いっぱいにやれたのが何より。春はこうじゃなかったから」
桜花賞を制した春。しかし、その道のりは決して平坦ではなかった。カイバ食いが安定せず、ずっと前線基地の栗東にいるとストレスからどうしても体が目減りした。そのためレースが終わるとトレセン近郊の牧場でリフレッシュする必要があったが、この中間はずっと栗東にいる。
「食いが良くなったので思い通り調整できる。攻め馬を加減しなくて良くなったから、仕上げは随分楽になった」
これを本格化というのだろう。桜花賞を勝ち、オークスで3着した後も、夏にクイーンSで古馬相手に2着。余裕残しだった前走のローズSも3着と、とにかく崩れない。ハマッた時の破壊力はオークス馬トールポピーかもしれないが、距離や馬場を問わず、これだけの成績を残してきたレジネッタの安定感は世代トップといっていいだろう。
秋華賞の舞台、京都の2000メートルはトリッキー。内回りでゴチャつきやすく、仕掛けどころも実に難しい。たびたび波乱が起きるのもそのせいだ。それだけにレジネッタのまじめな走りは頼りになる。
そして今回はこん身の仕上げが加味される。「秋の目標はここ。秋華賞が勝負だから。悔いのない仕上げをした」と同助手。先行しても、追い込んでもいい。自在の脚で2冠を狙う。
【最終追いVTR】ラスト1Fだけ気合をつけられたが、シャープな伸び。時計のかかる馬場も苦にせずに最後まで軽快な動きを見せた。馬体減りもまったく見られず、好調子をキープしている。