本誌編集部の中にも、そんな悩める中年オヤジが何人かいるが、「ウチの旦那は薄毛をもっと気にした方がいい!」と、奥さんからたしなめられたのが、周りから“ミノさん”と慕われている記事班のS班長(54)。
早速、その話を聞きつけた部下のワタクシが「AGA(男性型脱毛症)の最新治療について誌上でレポートしましょう。どうやらミノさん本人が実践する気満々です」と編集長に掛け合い、とんとん拍子で決定したのがこのページである。
3月某日、S班長とともに訪れたのは、都営大江戸線新宿西口駅近くにある『ヒルズタワークリニック新宿院』(東京・新宿区)。薄毛のほか、包茎、早漏、勃起不全などの治療も行っている男性専門の医療機関だ。中でも『AGA発毛再生外来』という診療の名称に“希望の光”がピカピカ見える。
「自毛再生治療って何だかスゴそうですよね」
「まだ、やると決めたわけじゃない!」
S班長のツッコミをかわし、2人でイザ突入。予約の際、すでに趣旨を説明して取材の許可はいただいている。それにしても、ビルに入ってエレベーターに乗り、クリニックのドアを開けて受付を済ませるまで、どこにも“恥ずかしさ”を感じさせる空気がない。さすがは“男性専門”だなあと妙に感心してしまった。
早速部屋に案内され、まずはカウンセリングからスタート。当然のことながら薄毛にもいろいろなタイプがあり、カウンセラーの方によると、「もはや手遅れ」の状態もあるのだとか…。
大別すると、“始まり”が頭のてっぺんからの人と前頭部からの人、それらが後々“合体し”、ほぼ七つの段階で示される。“手遅れ”を最終の7段階目とすれば、S班長の場合は「4と5の間」らしい。一安心の様子のS班長。多少ノッてきたようだ。
さらに生活習慣全般にわたって質疑応答が続く。
仕事時間、就寝起床時間、スポーツはしているか、酒・タバコのたしなみ、病歴、常用している薬、親族に薄毛の人はいるか、いつごろから薄いと感じるようになったか、などなど。
これらのカウンセリングは「その人に合う治療方法が、どのような内容で、どのくらいの期間やるかを目安として提示するためのもの」だという。「患者さんによって『発毛を実感できた』というところまでいくには、早い人で半年、周りの人が気付くのは、それこそ1年以上かかる場合もあります」とのこと。
AGAは男性型脱毛症の名の通り“病気”である。しかし、放っておいて治るものではなく、進んだきり元へは戻ってくれないとても厄介なもの。その原因についても、詳しく説明してくれた。
「薄毛の悩み」とは俗に、この毛周期のサイクルの異常により、髪の毛が残ってくれない状態を指す。髪の毛がしっかりとする前に抜けてしまうのだ。悪さをしているのは、もともと体内にある男性ホルモンと酵素、この両方が結び付いてできるDHT(ジヒドロテストステロン)という物質。これらの“結合”を止めるのが『フィナステリド』という薬なのだが、問題は結び付かないようにしているだけで、実際、毛がしっかりするようになるには血流を良くする必要がある。この“仕事”をしてくれるのが『ミノキシジル』だ。
「2010年の4月に日本皮膚科学会が初の診療指針を発表した際、5段階評価で強く勧められる【A】と認定されたのが、この二つの処方薬です。製薬会社が違うので、残念ながら声高に言えませんが、これらの効用からもわかる通り、実は一緒に使用しなければあまり意味はありません。そしてもうひとつ、これらは“育毛”処置であり、“発毛”ではありません。当院が施す『自毛再生治療』とは、この二つと並行して、失われた力を取り戻すための治療、具体的には頭皮の毛根直下に直接、成長因子を注入していきます。毛髪は毛母細胞の増殖や分化によって発毛します。その際に不可欠なのが成長因子なのです。毛髪のサイクルを正常に整え、血流を良くし、患者さんの症状に合わせて配合した成長因子を注入することで、自毛をよみがえらせるのです」
一通りのカウンセリングの後、先のDHTの値を確認するための採血と、頭髪の状態をマイクロスコープを使ってより細かくチェック。最終的に治療を行った場合の効果のほどが示されて、「さて、どうしましょう」となった。ここまでが何と無料だという。S班長は、すっかり前のめりだ。
最も気になる治療費については「青春謳歌は人それぞれ」というS班長の言葉をそのまま引用させていただき、ここでは差し控える。これから長〜い期間をかけて『AGA最新治療』の実践レポートを誌上でお届けするので、興味のある読者はぜひ見守っていただきたい。
通院治療の開始は1カ月後と決まった。まずは内服薬、外用薬、シャンプーの入った“豪華セット”を処方され、1回目は終了。果たして“ミノさん”は発毛を実感することができるのか−−。
次回は頭皮に直接行うという治療の模様を中心にレポートします。(続く)