初めての試みとしてファン1000人を招待して行われた今年のドラフト。注目はなんといっても、高校ナンバーワン左腕の菊池に集まった。
ドラフト前には、日米20球団との面談が行われるなど、壮絶な争奪戦が繰り広げられ「10年、20年にひとりの逸材」と評価された。この日は、野茂英雄投手と小池秀郎投手を超える9球団の指名が予想されたが、外れた際のリスクや補強方針の変更などもあり、最終的には6球団から指名を受けた。
抽選の結果、西武が交渉権を獲得。くじを引いた右手でガッツポーズした渡辺久信監督は「ありがとうございます。将来的にも素晴らしい可能性を秘めた投手だと思うので、しっかり育てたい。雄星クン、すごい運命を感じています」とラブコール。菊池本人はプロ入りを宣言してしており、入団は確実と見られている。
菊池が6球団の競合となったものの、終わってみれば特に大きな波乱もなく終わった今年のドラフト。“球界の盟主”巨人は、菊池争奪戦には加わらず、清武英利球団代表が今年2月から「1位指名する方針」と明言していた長野を指名した。
相思相愛の指名を終えた原辰徳監督は「2009年のドラフトは感慨深いものがありますね。強く運命を感じます。走・攻・守三拍子そろって、リーダーシップもとれる選手だと思います。予定通りです」と語り、会場を後にした。
巨人といえば、2005年のドラフトで156キロ左腕の辻内崇伸を1位指名しオリックスとの競合の末、獲得。将来のエース候補として期待がかかったが、入団後はヒジの手術などもあり、1軍での登板はゼロ。高校生は将来性がある一方で、未知数というリスクもある。それだけに、4年前のトラウマが頭をよぎったのかもしれない。
だが、高校球界きってのスーパースター獲得に乗り出さなかったことが、この先巨人に暗い影を落とすことになるかもしれない。
今年の巨人は、2月に日本テレビから主催試合の地上波放送を42試合から26試合にまで大幅に削減された。1990年代は20%前後だった巨人戦のナイター中継の平均視聴率も、今年は10%(ビデオリサーチ社調べ)と低迷が続いている。
圧倒的な戦力でリーグ3連覇を達成し、2年連続となる日本シリーズ出場を決めたものの、クライマックスシリーズの平均視聴率は昨年の17.3%から12.7%まで落ち込んだ。
即戦力との呼び声高い菊池が巨人に入団していれば、注目度はが然高まりメディアへの露出も増加。人気回復の“広告塔”の役割も果たしてくれる。やはり逃した魚は大きいのだろうか。すべては長野、菊池のプロ入り後の活躍にかかってくる。
◎雄星フィーバー期待
かつて“平成の怪物”松坂大輔が西武に入団した当時「松坂フィーバー」を巻き起こしたが、菊池にもその期待がかかる。
松坂が入団した1年目の1999年高知キャンプには、人口1万6516人の春野町(現在は高知市に編入合併)に全国から8万6000人(前年度約3万8000人)のファンが訪れた。また、松坂は今年ワールドベースボールクラシック(WBC)日本代表として、西武の宮崎・南郷キャンプに参加した際は、1日で8000人を集めた。
南郷町観光協会の担当者は「そこまでいくかどうか予想もつきませんが、マスコミさんも増えるでしょうし、ありがたいですよね」と早くも“雄星フィーバー”を期待していた。