「同伴はそのまま給与ボーナスにも繋がりますし、まだ我慢できたのですが、アフターは睡眠時間が削られる上、売上にならないのであまりメリットがないんですよね」
キャバ嬢がアフターで客の信頼を勝ち取れば、次の指名へ繋がる可能性は高くなる。しかしアルバイト感覚でキャバクラを始めた由里にとって、出勤後の付き合いは苦痛でしかなかった。だがもっとも辛かったのは先輩キャバ嬢とのアフターだったという。
「自分の客ならば、仕方なくアフターはがんばりました。もっとも辛かったのは先輩たちからのアフターの誘いでしたね。いつもお世話になっている先輩なので、断ることができなかったんです」
なぜ先輩キャバ嬢は由里を誘ったのか。それには一部の客の思惑を回避するためだと聞く。アフターの場合、食事の後のホテルを警戒して、客と二人っきりになるのを避けるキャバ嬢も多いのだ。そのため新人だった由里は、先輩からのアフター付き合う日々が増え、結果的にさらに時間が奪われていくこととなった。
「アフターは今まで食べたことのない高級料理を食べれることがあるのでそれはうれしいんですけどね。でも仕事だと思うとお客さんにも気を使いますし精神的に大変でした」
やがて由里は次第に客と高級な料理が食べられることよりも、早く休みたいという気持ちが強くなっていったのだという。今後、キャバ嬢として長くやっていくつもりがなかったため、彼女は半年で夜の世界を棄てた。現在は時間通りに帰れる事務員として都内で働いているという。
(文・佐々木栄蔵)