一般的なサッカーくじ『toto』の場合、J118チームとJ222チームの試合の中から、指定された13試合の結果に賭ける。しかも、もともと競技の特性上、「勝ち」「負け」以外に「引き分け」の試合も多く、これがギャンブル性を高めているのである。
一方、12球団で構成されるプロ野球は1日6試合が限界。戦力面や相性、ホーム・ビジター、主力選手の故障者などを総合的に検討しても、Jリーグに較べて、すべての勝敗を予想することが比較的容易でギャンブル性は低い。
また、現在のプロ野球では“12回打ち切り制”が導入されているが、これを“9回打ち切り制”に引き下げると、「引き分け試合」が飛躍的に増えて、ギャンブル性を高めることができるというわけだ。
「結果、試合時間も短くなり、テレビ中継の時間内にプロ野球くじの結果も分かるとなれば、スポンサーも付いて地上波放送も復活。ファンも増えるという皮算用なんです」(前出の広告代理店関係者)
一方、日本プロ野球選手会にも、首脳陣と同様の理由で反対意見が根強かったようだが、こちらは“セカンドキャリア”という問題に直面しており、状況が変わってきたのだという。
「セカンドキャリアとは、プロ野球選手になったものの、ケガや実力不足で退団を余儀なくされた若手選手の再就職問題です。現在のプロ野球界には、退団した選手をケアする組織も費用も不足している。そこで期待されているのが『プロ野球くじ』の収益金。一部を選手会に分配してもらい、セカンドキャリア対策に充てたいというのが本音です」(前出のスポーツ紙デスク)
前半戦を終了し、セ・リーグは「全球団貯金なし」。パ・リーグの強さばかりが際立つが、その要因の一つが「セ・パの試合時間の違い」だと指摘する声もある。
近年、テレビ放映を意識したセ球団はバントを多用し、一発長打よりヒットでつなぐ戦術にスイッチした。一方、パは依然として試合時間に無頓着で、打撃戦にこだわっている。実は、これがパ強セ弱の要因にもなっているというのだ。
「気の毒なのは巨人の原辰徳監督です。圧倒的な戦力を抱えながら、空中戦を封印された結果、能天気な野球を続ける中畑DeNAに首位を奪われている。前半戦を借金ターンしたことで白石興二郎オーナーは原監督の来季に関し、『後半戦が終わってから』と言葉を濁している。実は、プロ野球くじ導入には巨人も賛成で、それを前提にするなら、落合博満・前中日監督の下でスモールベースボールを学んだ川相昌弘ヘッドの監督昇格こそ適任だからです」(別のスポーツ紙記者)
さらに、巨人がプロ野球くじ導入に前のめりなのにはもう一つの理由がある。本誌既報通り、東京五輪・パラリンピック後に「新国立競技場」を本拠地球場にしようという狙いがあるからだ。
安倍晋三首相は17日、総工費が予算の2倍以上の2520億円に膨れ上がり、国民の批判が高まったとして、新国立の建設計画を白紙撤回した。これで、森喜朗元首相の悲願だった'19年9月のラグビー・ワールドカップでの“柿落とし”は夢と終わったが、ここにも巨人の影がちらつくのだ。
「安倍首相は1カ月ほど前から見直しの検討に着手していたと説明していますが、この時期はちょうど“巨人の新国立への本拠地移転”が表面化した頃でした。巨人からすれば、天然芝の育成に屋根は不要。それなのに2520億円で建設されては、レンタル料も高額になる。そこで、建設費の充当に検討されていたプロ野球くじの実施に読売グループが協力することで、建設計画の白紙撤回を政府筋に促したという情報もあるんです」(政治部記者)
ここに、巨人以外の各球団の思惑なども複雑に絡み合い、『プロ野球くじ』導入に向けて舵を切ったのである。計画実現のために、ベンチ裏では多額の“黒いカネ”も動いているはずだ。