日産の赤字計上は2000年3月期以来9年ぶり。ゴーン氏が社長に就任してからは初めてのことだ。08年秋以降の世界同時不況の波をモロにかぶった自動車業界とはいえ、2年連続の巨額赤字計上見込みは、ゴーン氏が“神”などではなくひとりの人間だったことを示した。
自動車業界に限らず経済界は不況の真っただ中にあり、消費の先行き不安は依然根強い。特に小回りの利かない大手企業では業績不振が長期化する恐れが強まっている。
12日に出そろった国内自動車大手8社の09年3月期連結決算は、販売不振や円高でトヨタ自動車、日産、マツダ、三菱自動車、富士重工業の5社が純損益で赤字に転落。ホンダなど3社も大幅減益となった。来年3月期で2年連続赤字となる見通しなのは、日産のほかトヨタ、マツダ、富士重の計4社。軽自動車「2強」のスズキ、ダイハツ工業は国内販売が比較的堅調だったため黒字を確保。ホンダも2輪車が下支えし、黒字を維持した。
日産は前期4822億円の黒字をキープしていたが、08年度の新車販売台数は、前年度比9.5%減の341万1000台。主要市場の米国で20%近く落ち込んだほか、日欧でも15%を超える減少となった。09年度の新車販売も9.7%減の308万台と予想。ゴーン氏は「09年度下半期の販売台数は前年同期を上回るだろう」と述べるのが精いっぱいだった。
さらに取りざたされている米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)の一部ブランドの買収を否定。フィアットからの出資受け入れで再建を図る米クライスラーとの事業提携についても「独立した企業として存続するなら進めるが、子会社になるなどしたら見直す」と、将来的な白紙撤回を示唆した。
売上高は8社すべてが前期を大きく下回り、中でも日産が22.1%減の8兆4369億円とずば抜けている。
ゴーン氏は国内の“守り”に徹する方針のようだが、果たして株主が納得するか? ゴーン氏自身の首すじが寒くなってきた。