バス連続爆破事件は北京五輪開催まであと18日というタイミングで、都市部の厳戒警備態勢をあざ笑うかのように発生した。
現時点では事件の背景は不明だが、失業者など社会に不満を持つ勢力や新疆ウイグル自治区の独立勢力が仕掛けた「計画的犯行」(北京の外交筋)の可能性は否定できず、五輪本番が標的となる危険度が高まっている。事件はほぼ連続テロとみて間違いなく、“犯行アピール”をするならば、全世界が注目する五輪開催中のほうが格段にインパクトが強くなるからだ。
これまでにも予兆はあった。今年に入ってから五輪開催に反対する勢力の活動は活発化。中国当局によれば、3月7日に新疆ウイグル自治区で独立勢力による航空機爆破未遂事件が発生した。
1月と7月にはテロに関与したとされる同独立勢力のアジトを公安当局が摘発。3月14日にチベット自治区で起きた暴動についても、「チベット独立勢力が画策した」(当局)との見方を強めている。
一方、地方では公安当局の不正や腐敗に怒る住民の不満もうっせきしており、貴州省では6月末に住民が公安施設を焼き打ちする暴動が起きた。
こうした不穏な空気を封印するべく、特に北京市内は空前の厳戒シフトを敷いている。警察のほか、軍系の武装警察やボランティアら数十万人を動員。「五輪妨害勢力が北京で事件を仕掛けるのは困難。起きるなら地方だ」(中国筋)との指摘が出ていたほどの重点配備だった。
しかし、北京、上海、天津などの五輪会場となる都市に比べ、昆明など地方都市の警備は手薄なのが現状。五輪開催中に同時多発地方テロなどが仕掛けられる可能性は低くない。
雲南省公安庁によると、最初の爆発があったのは現地時間午前7時5分すぎで、2度目は約1時間後。死亡したのは30歳女性と26歳男性。硝酸系の化学物質を使った爆薬が用いられ、1台目の爆発は車体前方、2台目は後方で起こった。時限爆弾との情報もある。
警察は現場を封鎖、主要道路に検問所を設けて捜査を進めている。中国公安省は事態を重視し、刑事犯罪の専門家を現地入りさせてテロの可能性を含めて調べている。