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本好きのリビドー(247)

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提供:週刊実話

◎快楽の1冊
『平成監獄面会記―重大殺人犯7人と1人のリアル』 片岡健 笠倉出版社 1380円(本体価格)

★面会と文通で迫る死刑囚らの深層

 故・大杉漣が自らプロデュースと主演を兼ね、惜しくも遺作となった昨年の映画『教誨師』は重い見応えの傑作だったが、そこで死刑囚を演じた俳優たちの姿が本書を読む間、現実の死刑囚に重なり絶えず脳裏に揺曳して参った。

 感情の起伏が露骨に激しく、表情ひとつ変えずに矛盾した内容の発言を繰り返し、責任は常に他者に転嫁する女性の死刑囚に扮した烏丸せつこの芝居は特に鬼気迫るものだったが、本書に登場する人物でいえば、“後妻業の女”として名を馳せた筧千佐子や、東の木嶋佳苗と並び(不躾な表現だが)、なぜこのルックスで男が次々に群がったのか? と人間性の深遠に思いを致さぬ訳に行かない西の“蟻地獄的魔性の女”上田美由紀がまさにそれ。著者との面会や手紙でのやり取りを見る限り、やはり重篤なサイコパスという言葉が浮かぶのは止むを得ない。

 しかし12歳の時、無断で愛犬を殺処分された怨みを、30年以上も経ってから当時の厚生省のトップを殺害することで晴らした小泉毅や、知的障害者20人近くを一気に惨殺した植松聖が語る自己の犯行へのあまりに確固たる信念に基づく裏打ちぶりを知るにつけ、特に前者の落ち着き払った態度の、あえて言うが潔さにはいかに死刑制度の絶対支持肯定論者でも、ややたじろいでしまうのではないか。

 本文中“「真犯人」より「無実の被疑者」のほうが自白しやすいというセオリー”で指摘される通り、現行の司法制度上で冤罪被害が生じる可能性は低くない。だからこそ最終章で扱われるケースには正直、全身で覚える隔靴掻痒感がこの上ないといおうか、不条理な結着の仕方に寒気がする。サブタイトルが8人でなく、「重大殺人犯7人と1人のリアル」の意味を噛み締めたい。_(居島一平/芸人)

【昇天の1冊】

 元モーニング娘。の“ゴマキ”こと後藤真希の不倫現場が、東京・錦糸町のラブホだったと聞いて、驚いた方も多いだろう。

 そこで注目したいのがラブホ関連本である。そうした本にこそ、人がなぜラブホにひかれるかの鍵が隠されているからである。手に取った1冊が『ごきゅうけいですか? ラブホスタッフの上野さん』(KADOKAWA/1000円+税)。

 すでにコミック・ドラマ化もされているエッセイなのでご存じの方もいるだろうが、「上野さん」とは都内某所のラブホに勤務している20代男性。ホテルにやって来る無数のカップルを傍観してきた経験から、恋愛・男女関係に対する的確で紳士的なアドバイスが好評だ。本書は、その助言をまとめた1冊である。

 束縛夫から逃れラブホにしけ込んだゴマキの心情が、金言から読みとれる。いわく「人は誰しも自分を理解してくれていると感じることが非常に好き」「大事なのは相手を拒否の方向へ向かわせないこと」。

 不倫相手の元カレは、ゴマキにとって自分の境遇を理解してくれる存在だったのだろう。そこで男は「ラブホに行ったことがないから行きたい」と、女を拒否できない方向へと向かわせた―元アイドルを背徳愛に走らせた恋愛術が、本書からも読み解けるのだ。

 錦糸町は、落語家の三遊亭円楽が女を連れ込んだ場所でもある。現在の東京では珍しいうらぶれ感満載の歓楽街に、ラブホが数多く軒を連ねる。マスコミ注目の街となるかもしれない。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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